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ドラフト指名漏れと2年後の希望。
番記者が見た早稲田大4番の素顔。 

text by

望月優樹

望月優樹Yuki Mochizuki

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photograph byKanaha Une

posted2019/11/26 11:30

ドラフト指名漏れと2年後の希望。番記者が見た早稲田大4番の素顔。<Number Web> photograph by Kanaha Une

大学生活最後の試合となった早慶戦では2安打を放ち、勝利に貢献。社会人に進む加藤は、2年後のドラフトへ新たなスタートを切った。

「戦犯」とののしられることも。

 もう1つは、早大でプレーした4年間を振り返っての「結果が出なければすぐに厳しい言葉を言われる苦しさを、ずっと感じていた」という吐露。

「早稲田の4番」の看板は重く、4番に定着した2年春以降、常に期待され、そして批判にさらされ続けてきた。

 凡退するたびに「やる気がない」、「勝ちたくないのか」といった言葉を浴びせられ、「戦犯」とののしられることもあった。そんな厳しい視線の中でプレーし続けることがどれほどの辛さや苦しみを伴うか、想像に難くない。番記者として接してきた日々の中で、彼の「やる気」を感じない日はなかった。本人は、周囲の言葉をずっと受け止めてきたのだ。

 しかし、ドラフト会議も終わり、社会人野球に進むことが決まって迎えた大学生活最後の早慶戦に、加藤は晴れ晴れとした表情で現れた。

「4番主将」という重圧から解放され、「早慶戦は心が躍る舞台、味わいます」と、1人の野球選手としての言葉に変わっていた。今まで見たことのない加藤の顔だった。

少年のように、一点の曇りもなく。

 そして迎えた早慶戦、初戦を落として後がなくなった2回戦で、シーズン9戦9勝と無敵を誇っていた慶應大の全勝優勝を阻止する大きな白星をつかむ。

 六大学野球のシーズン最終カード、早慶戦の3戦目。勝っても負けても引退という正真正銘ラストゲーム。そんなプレッシャーのかかる試合で2安打を放ち、チームもサヨナラ勝ち。加藤の大学野球生活は勝利で幕を下ろした。

「この試合が終わればユニフォームを脱ぐし、なんと言われてもいいだろうと。すごく清々しく、なんの曇りもない気持ちで試合に臨めた」

 試合の後、加藤は晴れやかな笑顔でこう言った。それは一切の余分な感情なく、一野球人として純粋に野球を楽しんでいた何よりの証拠だった。プレッシャーと戦い、多くの期待を背負い続け、指名漏れさえ経験した加藤が「楽しかった」と少年のように笑って大学野球を終えたこと。それが私は、たまらなく嬉しかった。

【次ページ】 社会人を経て2年後にプロへ。

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