野球のぼせもんBACK NUMBER
「ロマン砲」か「博多のどすこい」か。
ホークス三軍で育つ砂川リチャード。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2019/11/10 11:40
写真撮影に応じる際にお茶目な表情を見せる砂川リチャード。父はアメリカ人、兄はマイナーリーガー。
山川穂高に指摘された欠点。
コラム冒頭で記したように長打力が最大の魅力だ。その溢れんばかりのパワーには王貞治会長も一目惚れしたほど。今年の春季キャンプでB組視察をした際に思わず釘付けになり、付きっきりのマンツーマン指導が行われたほどだった。
また、その才能開花に一役買ったのは、同郷のホームラン王だった。
今季を迎える前のオフ、地元の沖縄でライオンズの山川穂高と一緒に自主トレを行った。
「山川さんのフリー打撃はもちろん凄かったけど、意識の持ち方や取り組み方がとても勉強になりました。ウエイトトレーニングをほとんどやらないのは驚きましたが、打撃の順番を待っている時もずっと下半身強化をしたりストレッチをしたりしている。ひとつひとつの準備があるから、あれだけの結果を残せているんだなと感じました」
また、欠点もすぐに指摘されたという。
「1年目どれくらい打ったの、と聞かれたので『全然でした』と答えたら、そうだろうねと。バットが下から出ている。それじゃ打てるわけがないと言われました」
バットのヘッドが下がって遠回りする悪癖を修正することを徹底した。「今年10本以上打てたのはそれが大きかったと思います」とその助言に改めて感謝をした。
「またこのオフも一緒に練習させてもらおうと思っています。山川さんはいつも沖縄に帰ったら12月20日くらいからバットを振っているみたいなので、出来るだけ早い時期から一緒に出来ればいいですね」
彼はロマン砲なのか。
藤本三軍監督は「沖縄育ちだからちょっとノンビリしているところがある。すぐに自分の限界を作っちゃう。柳田(悠岐)なんかも1年目の頃はブツブツ言いながらも、試合後も毎日1時間の特打を自分からやっていた。そういう姿勢が欲しいよね」とやや心配していたが、少し自信をつけた砂川の顔は逞しさが増したように見える。
鷹のロマン砲なのか、もしくは「博多のどすこい」か。
そんな未来を思い浮かべながら取材をする秋の宮崎。しばらく試合を観られなくなるが、また別のプロ野球の楽しみがそこにある。