野球のぼせもんBACK NUMBER

「ロマン砲」か「博多のどすこい」か。
ホークス三軍で育つ砂川リチャード。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

PROFILE

photograph byKotaro Tajiri

posted2019/11/10 11:40

「ロマン砲」か「博多のどすこい」か。ホークス三軍で育つ砂川リチャード。<Number Web> photograph by Kotaro Tajiri

写真撮影に応じる際にお茶目な表情を見せる砂川リチャード。父はアメリカ人、兄はマイナーリーガー。

内川は37歳、松田は36歳。

「こういう選手に出て来てもらわんと、将来のホークスは大変なことになるよ」

 今年、ファームを取材するたびに藤本三軍監督はそんな言葉を繰り返した。そして、いつも真っ先に砂川の名前を挙げるのだった。

「ウッチー(内川聖一)が37歳、マッチ(松田宣浩)が36歳やろ。ずっとホークスの主力で頑張ってくれているけど、現実問題としてプロ野球の第一線で40歳超えてとか50歳までバリバリやるのは無理や。二軍にも良い選手はいるけど、タイプがちょっと違う。やっぱり『ロマン』を感じる、次世代の選手を育てておかないといけないんよ」

 こんな発言が、ユニフォーム組から聞かれるのがホークスの強みである。

5年後を意識した育成はSBならでは。

 中長期的な展望でチームづくりを行うのは主にフロントの役割。現場を預かる首脳陣は目の前の勝利を最優先に考える。それがプロ野球組織の通例だ。

 二軍は育成主体ではないかと思われがちだが、実際は一軍に近い選手のための準備や調整の場という性質が強く、選手育成に集中できない。だから多くの育成選手を抱えるのは難しいし、若手の中には「体づくり」を理由にファームでさえほとんど試合経験を積むことが許されない選手も球界では時折見られる。

 三軍制を導入したホークスではそのような悩みが一切見られなくなった。三軍首脳陣も1年先、3年先、5年先を描きながら指導にあたり、試合に起用していく。

「リチャードも、今年1年間しっかり試合を経験できたのは大きかったと思うよ。まだまだ足りないところだらけだけど、自信になったと思う」

 藤本三軍監督は「ポスト松田」を自覚させるために、砂川を主に「4番三塁」で起用した。シーズン半ばはチーム事情からショートを守った。超大型遊撃手である。

「お世辞にも上手くはない(笑)。だけど、一生懸命守っていたし、良い経験をしたと思うよ」(藤本三軍監督)。

【次ページ】 山川穂高に指摘された欠点。

BACK 1 2 3 NEXT
砂川リチャード
福岡ソフトバンクホークス

プロ野球の前後の記事

ページトップ