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金子達仁が見てきた敗者の態度。
ラグビーW杯の今後と釜石の未来。
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byGetty Images
posted2019/11/06 20:00
表彰台から降りてまもなく、銀メダルを外したイングランド代表HCエディー・ジョーンズ。その表情から悔しさが滲み出ていた。
釜石は、まだ1試合しかやっていない。
さて、6週間近く書かせていただいたこのコラムも今回がこれで最終回になる。最後に1つ、どうしても書いておきたいことがある。
釜石はこのままでいいんですか?
ワールドカップ終了後、大会を統括するワールドラグビーは年間表彰式で釜石市に『キャラクター(品格)賞』を与えた。ラグビー界に顕著な貢献をした個人や団体に贈られる賞だという。
うんうん、アジなことをしてくれるじゃないか、と感心する反面、外国人にホメてもらって、なんだかちょっといい気分になって、あとはそのままフェイドアウト……なんてことだけには絶対なったらいかん、とも思うのだ。
だって、釜石ってたった1試合しか、ワールドカップやってないし。
あらゆる人の思いが詰まったスタジアム。
瓦礫で埋めつくされた小中学校の跡地に、スタジアムができた。10億円近いお金をかけて、照明施設と仮設スタンドを設置した。
釜石といえば大漁旗。でも、サッカーと違ってラグビーの国際大会では大きなフラッグを打ち振る文化はない。
ひょっとしたらワールドラグビーから禁止通達されるかもしれないから、あらかじめ交渉しておこう──と考えた釜石の組織委員会の人たち。
あの釜石で試合が行なわれるなら、と全国から大会ボランティアに応募した人たち。
そんなそんな、いろんな人たちの労力と知恵と時間と……ありとあらゆるものを結集させて迎えたワールドカップが、たった1試合で終わってしまった。大会終了後、仮設のスタンドや照明施設は解体が始まっている。
やるしかないでしょ、来年以降も。