JリーグPRESSBACK NUMBER
第4GKから7年目のルヴァンMVP。
新井章太と川崎が描いたストーリー。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/10/29 18:00
3失点しながらPK戦での活躍でMVP獲得。新井章太の“逆転人生”からすれば、それも彼らしいと言えるのかもしれない。
戦力外、トライアウト、第4GKを経て。
新井は今年、川崎フロンターレ在籍7年目を迎えた。
最初に所属した東京ヴェルディでは、1試合の出場機会もなく2シーズンで戦力外となった。トライアウトを経て、「これで認めてもらえないならサッカーを辞めよう」と覚悟していたが、幸運にもJ1の川崎から誘いがきた。驚きと同時に、「人生でこんな嬉しいことあるのか」と歓喜したが、第4GKからのスタートは苦難の連続だった。この年、新井はこんな思いを吐露している。
「我慢ですよね、我慢。でも試合に出たいという気持ちもすごく持っています。Jリーガーで誰よりも試合に出たいと思っているぐらい。でもそんな思いの人は日本にたくさんいるんだろうな、とも思ってます」
日々の練習から研鑽を積み続けた。
2015年には、プロ5年目にして念願のJリーグデビューを果たし、キャリアを刻み始めている。
第2GKとして見たタイトルマッチ。
それでも、タイトルのかかったビッグマッチには縁がなかった。2016年の天皇杯決勝と2017年のルヴァンカップ決勝は、第2GKとしてベンチで見守り、「目の前で見ているだけだったので、何も力になれなかった」と敗戦の悔しさだけを噛み締めた。
それだけに、決勝の舞台でゴールマウスに立ってタイトル獲得に貢献する仕事は、長く見てきた夢でもあった。
「ずっと出たいなと思っていました。特にルヴァンカップは前夜祭もある。そういうお祭り的な感じもあるので、そういう舞台に立ちたいと思っていたし、それを夢見てきた。そういう意味では、自分を表現したいと思ってます」
決勝の相手は、北海道コンサドーレ札幌。
新井がもっとも警戒していたのは、元チームメートである福森晃斗の左足だった。