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男子バレーに求められる意識統一。
快進撃で終わらせないための舵取り。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byItaru Chiba

posted2019/10/24 19:00

男子バレーに求められる意識統一。快進撃で終わらせないための舵取り。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

今回のW杯は8勝3敗で28年ぶり4位に。絶対王者ブラジルに敗れるも、12年ぶりに1セット奪うなど東京五輪へ向け弾みをつけた。

「ベスト8では低すぎる」

 その一方で、気になるのが選手と監督の意識の差である。

 今年の代表が始動する時、中垣内祐一監督は選手たちを集めたミーティングで、ワールドカップの目標を「ベスト8以上」と言ったという。

 その時、隣に並んで座っていた柳田と石川は顔を見合わせた。

「ワールドカップって何チーム出るんだっけ?(12チーム)」

「オレら(前回)6位だったよね?」

 2人の間でこんなやり取りがあった後、石川は、「言います」と意を決し、全員の前で「ベスト8では低すぎる」と指摘した。

「やる気満々で(代表に)行っていたので、そういう目標を聞かされた時に、納得がいかなくて。自分だけじゃなく他の選手もそうでしたし、自分たちが思っていることと、監督スタッフの思っていることが一緒でないと、チームが強くなっていかないと思うので」と石川は語っていた。

 今回のワールドカップでは、日本は第4戦のアメリカ戦に主力選手を出場させず、試合は0-3で敗れた。試合後、中垣内監督は選手起用についてこう説明した。

「明日のアルゼンチン戦に全力を注力するため。それから、1日おきに試合が行われるオリンピックを見越して、スターティングシックスを1日おきで使うという目的もある。加えて、今大会の1週間前に、9日間で8試合を行うアジア選手権を戦い、今大会も2週間で11試合。例年、ワールドカップをフルに戦うと、選手のコンディションが極端に悪化する。故障という最悪の事態につなげたくない。なるべく今大会は戦力を分散して、特定の選手に集中することのないようにしたい」

五輪の目標をどこに置くか。

 コンディション面の配慮は理解できる。一方で、東京五輪まで1年を切った今、アメリカやブラジルというほぼベストメンバーで参戦している強豪に、今の日本の100%をぶつけてこそ得られるものや見えるものがあるのではないか。そう尋ねると、監督はこう答えた。

「我々に求められているのは、アメリカとのレベル差を感じることではなく、ワールドカップで成績を出すこと、もしくは東京五輪で成績を出すことですから、オリンピックでぜひ勝ちたいアルゼンチンに(今大会でも)しっかり勝利を挙げるということを選択したということです」

 このコメントが疑問だった。五輪でメダルを目指すとすれば、アメリカも倒さなければならない相手のはずだが。監督は五輪でどこに目標を置いているのか。

 ワールドカップ最終戦の後、中垣内監督は東京五輪について、「どこと当たるかがまだ決まっていないので、まず予選ラウンドを突破するというのが重要なこと。そこから先については現段階では考えていない」と述べた。

 それならば、アメリカ戦後のコメントは理解できるが……。

【次ページ】 立ち位置を把握できたブラジル戦。

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