マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
阪神のドラフトに何が起きたのか。
甲子園のスターだらけ、もしや……。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/10/24 11:30
西純矢を繰り上げ1位で指名できたのは阪神にとって幸運だった。しかし、その後の指名には運ではなく意志を感じた。
これまでならバランスをとったはず。
1位指名・奥川恭伸を抽選で逸し、繰り上げ1位で、昨夏の甲子園を沸かせた西純矢(投手・創志学園)の名前を挙げたときは、実力と素質から考えてそりゃそうだよなと、まだこちらもフラットな心境だったが、2位に将来の4番候補・井上広大(外野手・履正社高)をドーン! と指名したところで、なんだかいつもと違うぞ……と異変の匂いを感じ始めた。
1位を「高校生投手」でいったのだから、今までの阪神なら、大学生か社会人を1人いっておいて、「ちゃんと即戦力も手当てしておきましたよ」と、鬼より怖いタイガースファンに申し開きができるようにしたものだ。
だから、即戦力が期待できる左腕の立命館大・坂本裕哉(投手→DeNA2位指名)か、やはりいきなりローテーションの一角で働ける総合力を持ったJR東日本・太田龍(投手→巨人2位指名)あたりを指名しておいて、「印象バランス」を整えておく。
3位・及川を聞いて「よしっ!」。
そんなことを考えていたら、井上広大に続いて、3位に横浜高の大型左腕・及川雅貴(投手)を持ってきたところで、思わず「よしっ!」と小さく叫んでしまった。
ドラフト当日、私はTBS系インターネット放送『パラビ』のドラフト完全中継で、解説者として放送席に座っていた。
その真っ最中に、個人的感動で「よしっ!」とやったものだから、モロに音に入ってしまい、隣に座った進行役の方から足をポンとやられてしまった。
「西、井上、及川……ですか、ここまで甲子園のスターで押したのですから、徹底的に押していけばいいんですよ!」
勝手に、力こぶが入ってしまっていた。