プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人、先発不足のうえに中継ぎ崩壊。
連敗からの日本一は2回だけだが……。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/10/21 11:50
7回、均衡を破るスリーランを放った松田は、お得意の“熱男”ポーズを決めた。
「100点満点の『熱男』ができた」
大歓声の中で「熱男!」の掛け声がヤフオクドームに響き渡る。
「100点満点の『熱男』ができたと思う。最高の舞台、最高の場面で最高の結果。(今季)一番印象深い本塁打です」
松田が吠えて、ソフトバンクは本拠地での日本シリーズを14連勝。不敗神話はまたまた続いた。
前半は息詰まる投手戦だった。
6月の交流戦では巨人打線に4回5安打3失点と打ち込まれたソフトバンク先発のサブマリン・高橋礼投手は、その時には投げていなかったシンカーを勝負球に5回まで1人の走者も出さない完全ピッチング。6回に先頭の若林晃弘内野手に死球を与えたが、それも併殺で切り抜けて巨人打線を封じ込めた。
一方、巨人の先発・メルセデスも6回まで許した安打はわずか1本で四球は2つと、こちらもほぼ完璧な内容で試合は進んだ。
そして歯車を動かしたのは、原監督の決断だった。
好投のメルセデスから大竹へのスイッチ。6回でまだ球数は76球と余裕があったが、この不可思議にも映る投手交代が、試合の流れを一気にソフトバンクへと持っていった。
この決断には2つの背景があった。
シーズン中から80球前後でスタミナが……。
1つはメルセデスの状態だ。
「大丈夫みたいですけど、少し足が張ったみたい。球数ではなく、ストレートも少し落ちてきていた」
こう語るのは宮本和知投手総合コーチだ。
確かに立ち上がりから140km台前半が出ていた真っ直ぐが、6回ぐらいから130km台が出始めるなど球威が落ち始めていた。阪神とのクライマックスシリーズ(CS)では7回104球を投げたが、シーズン中から80球前後でガクッとスタミナ切れして球威が落ちて打ち込まれるケースが多くあった。
交代機の難しい投手であることは間違いなく、その中で2つ目のポイントが、巨人ベンチを動かす最終的な理由になっていた。
「次があるから」
宮本投手総合コーチが語った次とは、中5日での第6戦先発だ。