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想像を遥かに超えたサービスエース。
19歳西田有志に、仲間も世界も慄く。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiyoshi Sakamoto/AFLO
posted2019/10/18 19:00
時速120kmを超えるサーブは大きな武器。キレのあるスパイクも含め、今大会で世界レベルにあることを知らしめた。
「最後は西田が持っていきました」
「あそこまで何をやってもできない、追い詰められたのは初めてでした。今、自分がどの位置にいるのか正直わからないですし、でも祐希さんが『大丈夫』と言って下さる中で、やっぱり期待に応えないといけないし、プレッシャーじゃなくて、ポジティブに捉えないといけない。たまに、怒られることもありますけど、そこもしっかり受け止めて、次につなげる。どんな状況であれ、次につなげるステップアップをしたいです」
そしてこの一戦こそがカギだった、と言うのは主将の柳田将洋だ。
「競り勝てたという結果だけでも大きな勝利でしたが、勝ったことで西田も救われた。あれだけ落ち込んだ西田を見ることがなかった分、日本代表というチームにとっても、西田にとっても意味のある勝利でした。でも、それが結果的にあのカナダ戦のサーブにつながるか、と思うと、やっぱりすごいですよ。全部、最後は西田が持っていきましたから」
日に日に送られる歓声も、注目度も一気に増した。望み通り、スターへの階段を昇り始めた西田を、一度は崖っぷちまで追い込んだエジプトのアブデルハイはこう称えた。
「日本のオポジット、彼は私が出場した5大会で対戦した日本人の中で、ベストの選手。将来の可能性を秘めた、才能あるオポジットに感銘を受けました」
苦さと喜びを味わった11試合。経験という武器を携え、次はジェイテクトスティングスの一員として、26日に開幕するVリーグが西田の戦う舞台になる。
カナダとの熱戦翌日、都内で開催されたVリーグ開幕記者会見に出席した選手たちは「これから自分たちが、あのサーブと対峙すると考えると恐怖しかない」と口を揃えた。
世界を驚かせたサーブが、今度は日本を慄かせる。そしてそのたびに、西田は心に誓うことだろう。俺はもっと、強くなる、と。