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曽ヶ端準「日本人GK、頑張ろうぜ」
川崎・新井章太に響く大先輩の言葉。
posted2019/10/12 11:40
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
J.LEAGUE
「日本人GKの評価を上げたいんですよ、Jリーグの中で」
声の主は、Jリーグ王者・川崎フロンターレのGK新井章太である。
第26節のジュビロ磐田戦からゴールマウスを任されている男は、そんな野心を胸に秘めてJリーグのピッチに立っている。
昨今のJ1リーグを見渡すと、正GKの座を外国人選手に託すチームも何ら珍しくなくなった。
川崎もしかりで、2016年に韓国代表として圧倒的な実績を誇るチョン・ソンリョンがやって来た。
新井はその前年に出場機会を増やしていたが、ソンリョンが加入してからは正GKの座を譲ることになった。その年にチームは優勝争いを演じ、翌年の2017年には悲願のリーグ制覇を達成。昨年は最少失点でのリーグ連覇を成し遂げた。
外国人GKブームの火をつけたのは……。
2016年からの3シーズン、第2GKとして過ごし続けた新井は「ソンリョンは本当にすごいし、尊敬できる」とその実力と人間性を認めた上で、こう述べる。
「Jリーグに外国人GKブームの火をつけたのは、自分なんじゃないか。俺のせいだとずっと思っていたんです」
冗談ではなく、真顔である。そして言葉をこう続ける。
「自分が止められなかったので、他のチームもGKに外国人選手を使おうと思ったかもしれない。勝手にですけど、そういう気がしているんです。鹿島もそうですよね。だから、もう1回、(日本人GKの)評価を取り返さないといけないと思っているんです」
新井にとって、2019年は試練とも言える日々の連続だった。
シーズンが始まると、リーグ戦とACLの全試合でチョン・ソンリョンがゴールマウスに立ち続けた。通常であれば、メンバーを入れ替えることの多いカップ戦ではチャンスが巡ってくるものだが、ACLを本気で狙いに行っているがゆえに、2番手の彼にも出場機会が巡ってこなかったのである。
海外遠征も含めた全試合でチームに同行していながらも、1分も出ることなくベンチを温め続けた。