猛牛のささやきBACK NUMBER
これからオリックスは強くなります。
プロ14年、岸田護が後輩に託す夢。
posted2019/10/06 11:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
「ありがとう、マモさん」
そう書かれた白いボードを、スタンドの観客がいっせいに掲げた。
9月29日に京セラドーム大阪で行われたオリックスの今季最終戦。5-1とリードして迎えた9回表、現役生活14年間をオリックスに捧げた岸田護が、現役最後のマウンドに上がった。
9回は、かつて守護神を務めた時の主戦場。当時と同じように、口をとがらせ、緊迫感あふれる表情で、福岡ソフトバンクの高田知季に渾身のストレートを3球、投げ込んだ。高田のバットが三度空を切る。通算730個目の三振を奪うと、涙をこらえながらマウンドを下りた。
「ありがとありがと岸田!」というコールが、球場に響き渡った。
岸田を抑えに推薦した鈴木。
大阪の履正社高校から東北福祉大学、社会人野球のNTT西日本を経て、2005年の大学・社会人ドラフト3巡目でオリックスに入団した。
1年目から6試合に登板すると、2年目の後半には先発ローテーションに入り、4年目の2009年には10勝4敗と初の二桁勝利を挙げた。
その2009年シーズン後半、抑え投手が安定感を欠いていたため、当時の大石大二郎監督は、新たな抑えの投入を考えていた。そこで、捕手の鈴木郁洋(現・バッテリーコーチ)に、誰を抑えとして起用すべきか意見を求めた。
鈴木は「気持ちの面から言っても、まっすぐで抑えられることからも、岸田ですね」と真っ先に岸田を推した。
「先発や中継ぎまでと、抑えでは、考え方も違うし、気持ちも違う。全責任がかかる最後の砦だから。そこを任せられる気持ちの強さを持っているのは、うちでは岸田だと思った」と鈴木は語っていた。