猛牛のささやきBACK NUMBER
これからオリックスは強くなります。
プロ14年、岸田護が後輩に託す夢。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/10/06 11:30
引退セレモニーでT-岡田から花束を受け取る岸田護。現役最後の試合となったソフトバンク戦には元同僚らも駆けつけた。
元同僚も駆けつけた引退試合。
9月20日に京セラドームで行われた引退会見。記者たちのうしろで、海田や吉田一将、山崎福也、田口壮コーチが見守った。
29日の引退試合には、現在他球団で活躍する元同僚の金子や伊藤光(DeNA)、西勇輝(阪神)、近藤一樹、坂口智隆(ともにヤクルト)も駆けつけた。
岸田は自分の技術や努力について、あまり多くを語らない。
その人となりは、最終戦後の引退スピーチにも表れていた。約4分間のスピーチの間、自分の話はまったくしなかった。最初に、自身に関わったすべての人々への感謝の思いを丁寧に伝えた後、こう語った。
「絶対!強くなります」
「これから、オリックスは、強くなります。長い長いトンネルを、抜けようとしています。成長し続ける若手がチームを盛り上げ、実力十分な中堅がチームをまとめ上げ、そしてまだ残るベテランが、背中でチームを引っ張っていってくれると思います。絶対!強くなります。これからのオリックスは面白いです。
その先、頂点へ導いてくれるのは、いつも熱い声援をおくってくれるファンの皆さんです。ファンの皆さんが、このチームを優勝させます。選手は応えます。これからも、末永く、オリックスを、よろしくお願いします。14年間、本当にお世話になりました。ありがとうございました」
この日、先発して6回を1失点に抑え、最優秀防御率のタイトルを獲得した山本由伸は、しんみりと話した。
「マモさん、自分の引退セレモニーなのに、チームのことばかり言ってくれて。すごく考えてくれてたんだなと改めて感じて、すごいカッコイイ先輩だなと思いました」
岸田の唯一の悔いは、14年間で一度も優勝できなかったこと。その思いは、後輩たちに託された。