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30年経っても「タツノリ~」と叫ぶ。
巨人優勝が告げた、終わりと始まり。 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph byYasutaka Nakamizo

posted2019/09/24 11:30

30年経っても「タツノリ~」と叫ぶ。巨人優勝が告げた、終わりと始まり。<Number Web> photograph by Yasutaka Nakamizo

プロ野球は令和の時代も続いていく。巨人ファンは何度も何度もこの日の話をし続けていくのだろう。

原巨人らしい「育てながら勝つ」の実現。

 その光景を見ながら、最後まで2019年の原巨人らしいなと思った。

 優勝が懸かった大一番に年俸500万円のドラ6ルーキー戸郷が先発し、同じく年俸500万円の育成選手上がり増田がヒーローになる。丸佳浩や山口俊を始めとしたFAの大型補強ばかり話題になるが、その裏で二軍から多くの若手を抜擢したのも事実だ。

 さらにチームの土台を支えたのは高卒ドラ1遊撃手のキャプテン坂本勇人であり、同じく高卒ドラ1スラッガーで高橋由伸前監督が残してくれた4番・岡本和真である。随所で渋い働きを見せた37歳の亀井善行は'04年ドラフト4位で、ブルペンの救世主となったサウスポー中川皓太は'15年ドラフト7位。

 生え抜き主力組、補強組、外国人、そして叩き上げの多くの若手たち。それらを全員野球の絶妙なバランスで起用する原采配は、見事に「育てながら勝つ」という難題をクリアした。

本気で応援すると、もうひとつの人生になる。

 最終回は途中入団の助っ人クローザーがマウンドに上がる。ちなみにスポーツ報知の今季ベストの見出しはデラロサの好投を評した『デラ絶品』だと思う。この年俸3000万円のドミニカンも殊勲者のひとりだ。

 開幕から半年間、勝ったり負けたり喜んだり悲しんだりしながら、あれだけドキドキして追いかけてきたのに、不思議なことにいざ5年ぶりのVを目の前にすると「あぁ優勝するんだな」とか「帰りに記念グッズ買わなきゃな」なんて妙に冷静な自分もいた。

 最後はデラ絶品な三者連続三振締め。三塁側ベンチから選手が飛び出し、レフトスタンド、内野席の巨人ファンが一斉に立ち上がりガッツポーズをかまし、言葉にならない祝福の言葉を絶叫し、スマホを構え撮影して、原監督の胴上げが始まる。

 プロ野球の最大の魅力は贔屓のチームが勝てばまるで自分が勝ったように嬉しいし、悲惨な負け方をすればまるで自分がボロ負けしたような感覚に襲われることだと思う。

 年間143試合の長い時間を共有し、親や兄弟でもないのに、なぜかアイツは俺で、俺はアイツ状態。プロ野球でもアイドルでも大げさに言えば、何かを本気で応援する行為は、もうひとつの人生を生きるということだ。

【次ページ】 この優勝でやっと2次政権が終わったのだ。

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