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“重圧”に勝ったラグビー日本代表。
負けられない開幕戦で得た勝ち点5。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/09/21 12:00
序盤は「普段なら絶対にやらないようなミス」が続いた日本。プレッシャーがかかる開幕戦でノルマの勝ち点5を獲得した。
戦術的な修正をしないジョセフHC。
ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は、後半に向けて戦術的な修正をしていない。「やっていることは間違っていない。自分たちがやっていることを信じて続けていこう」と、選手たちを送り出した。前半の日本が技術的なミスを繰り返したのは、キックオフ早々の時間帯で浮足立ったことによる自信の揺らぎに理由がある。戦術ではなくメンタルの手当こそが重要だった。
後半開始早々の43分、田村がペナルティゴールを決めて15-7とする。さらに3分後、相手からボールを強奪したフランカーのピーター・ラブスカフニが、自陣から独走してトライをゲットする。田村のキックは失敗に終わるものの、背番号10は63分に貴重な追加点をもたらす。長い距離のペナルティゴールを成功させ、23-10とリードを広げた。
ここまで3トライである。あとは、ボーナスポイント獲得につながる4トライ目を奪えるか。
経験豊富な堀江「初戦はこういうもの」
68分、東京スタジアムが沸き立った。相手の苦し紛れのキックを保持すると、田村と交代したばかりの松田力也が中央から右へ持ち出し、パスを受けた松島が相手のディフェンス網を破ったのだ。松田のゴールも決まり、30-10とロシアを引き離す。この時点で、日本は勝利をほぼ確定させた。
スコアだけを見れば快勝と言っていいが、試合内容は手放しで喜べるものではない。開幕戦特有のプレッシャーを差し引いても、「試合を通して単純なハンドリングエラーもありましたし、なかなかリズムに乗れなかったと思います」という流の肌触りは正鵠を射る。
とはいえ、勝ち点5での勝利というノルマを達成したことで、チームが落ち着いた雰囲気に包まれていくのは間違いないだろう。
「初戦はこういうもの。いい勉強になったんじゃないですか。自分たちで流れを修正して30点取れたし」
3度目のW杯となるフッカーの堀江翔太は、落ち着いた口調で試合をレビューした。
姫野も「ホントにひと安心ですね。勝ったからこそ、いい経験になったと言えます」と、安堵の表情を浮かべた。自らが強みとするボールキャリーは、両チームを通じて最多を記録した。W杯初出場の25歳は、「最初にミスをしてメンタル的にかなりきましたが、逆に吹っ切れて思い切りやろう」と気持ちを立て直した。