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坂本勇人が見せてくれた理想の巨人。
一流から超一流、そしてスペシャル。
posted2019/09/14 09:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Nanae Suzuki
気が付けば、巨人は完全に「坂本勇人のチーム」になった。
今シーズンは夏場の負けられない重要な試合で、いつも背番号6が決定的な仕事をする。
9月7日、神宮球場でのヤクルト戦。5年ぶりの優勝を目指すチームは6連敗中で、2位DeNAに2.5差と迫られていたが、坂本は初回に先制タイムリーを放った直後、暴投で二塁から一気にヘッドスライディングでホームに生還してみせた。
優勝マジック20を点灯させた8月24日のDeNA戦(東京ドーム)でも、土壇場の9回裏2死一、二塁で相手守護神・山崎康晃から同点タイムリーを放ったのはこの男だった。
プロ13年目のシーズンもキャプテンを務め、ショートを守り、打率.313、35本塁打、88打点、OPS.955、得点圏打率.336と凄まじい成績を残している(9月12日時点/以下同様)。今季は開幕から36試合連続出塁のリーグ記録も話題になり、腰に違和感を抱えながらもここまで全試合に出場。
そのスマートな見た目とは裏腹に、とにかくデビュー当時からタフな選手だ。
一軍レギュラーに定着した2008年、19歳の坂本はオープン戦15試合から、ペナント144試合、夏のオールスター2試合、秋のクライマックスシリーズ4試合、日本シリーズ7試合までの「計172試合」すべてに出場してみせた。
プロ野球史上最強の遊撃手。
あの頃、まだ線の細かった10代の少年が、酸いも甘いも噛みしめて30歳の大人になった。7日のヤクルト戦では通算150度目の1試合3安打以上の猛打賞を記録したが、「報知記録室」によるとこれは巨人では川上哲治、長嶋茂雄、王貞治に次ぐチーム4人目の快挙だ。
セ・リーグの遊撃手で11度の二桁本塁打は長い球史で過去に坂本しか記録していない。現在通算1874安打と来季には榎本喜八が持つ、31歳7カ月の最年少2000安打の更新も現実味を帯びてきた。
比較対象がすべてレジェンドクラスの先人たち。こうしてあらためて記録を振り返ると、本当に凄い選手だ。まさに球界の“スペシャル・ワン”。我々はプロ野球史上最強の遊撃手の全盛期をリアルタイムで目撃しているのである。