ミックスゾーンの行間BACK NUMBER
大久保からの喝と麻也の期待を胸に。
橋本拳人はハイブリッドMFに変身中。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/09/09 12:15
パラグライ戦で国内組唯一の先発メンバーとなった橋本挙人。新ボランチ候補として名乗りを上げた。
橋本が目指すべきボランチ像。
一方で、吉田は決して厳しい言葉だけを残したわけではない。彼は以前からCBとボランチとの関係性を、最も大切にしている。吉田がボランチ論を語ると、これまでのプレー経験を含め、ありとあらゆるタイプについて多彩な表現をするところがいつも面白い。
そんな、ボランチにこだわりを持つ選手だからこそ、橋本への言及が気になった。
「まだ日本には、ボールを奪えて、パスも供給できるというハイブリッドのボランチがなかなかいない。プレミアのボランチは、今や守備・攻撃のどちらかが得意という感じでもない。それを目指せば、拳人は頭1つ抜けるんじゃないかなと思います。
たとえば、若いデクラン・ライス(ウェストハム)とか、モルガン・シュネイデルラン(エバートン)みたいなタイプ。ヨーロッパの選手でも、最初は足元のプレーが伴っていなくても、身体能力を生かしてプロになって、技術が後から伸びてくるケースが意外と多い。だから可能性は大きい。何より、ボールも扱えて、奪えてというボランチが出てくると、CBの僕としてはめちゃくちゃ楽になりますから(笑)」
黒子の男の確かな成長。
良さも至らなさも出た試合。橋本にとって、本格的な代表デビュー戦がそうなったことは良かったのではないだろうか。何より本人がそう噛み締めている。
「やれたところも、まだまだなところも。とにかく本当に刺激的な試合だった。さらに上の景色を見たいという欲も出てきた」
足りないことを突きつけられ、進むべき道を見つけてはミスをしながらも地道に歩んできた。そして少々遅咲きながら、ようやく飛躍のきっかけをつかもうとしている。
黒子の男、橋本拳人。スター候補の久保や派手な攻撃陣に隠れて、1人のMFが確かな成長を遂げつつある。