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大迫傑、競泳代表が集う“虎の穴”。
高地合宿地として躍進する東御市。
posted2019/09/11 11:40
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Hibiki Beppu
長野県に東御市という市がある。
東京では「とうみ」という読み方すらほとんど知られていなかった地方都市の名前を、ここ最近、突然よく耳にするようになった。
スポーツ界で同市がにわかに注目を集めているという。
男子マラソンで東京五輪代表の最有力とされる大迫傑(ナイキ)に加え、「山の神」こと神野大地(セルソース)や男女の日本陸連強化指定選手の面々がこぞって東御市での長期合宿を敢行。昨季の箱根駅伝で優勝した某大学も合宿を組んでいたという。
水泳界からも代表チームの平井伯昌コーチが「長野県東御市で10月の終わりから12月ぐらいまでナショナルチーム合宿を予定している」と語るように、競泳でも代表の国内合宿拠点に選ばれているのだ。
前述の神野が「最高の環境で最高のトレーニングができました」と語るように、トップ選手たちが次々に同市を合宿拠点に選んでいる理由が、2017年に完成した高地トレーニング施設の存在だ。
国内で最も標高が高いトラック。
湯の丸高原内にできた全天候型トラックは標高1735mの高地にあり、国内では最高標高のトラックだ。トラックを使ったスピードトレーニングはもちろん、周囲にはウッドチップの敷き詰められたクロカンコースが整備されている。また宿舎内にはトレーニングルームも完備されており、多角的なトレーニングができるようになっている。
しかし、こういったハコモノを作っただけで簡単にトップ選手が来てくれるほど合宿地というのは単純なものではない。練習環境の面で選手たちに過去のルーティーンを崩して新たな場所に足を運んでもらうというのは、想像以上に難易度が高いことでもある。
では、どうしてトップ選手たちは東御市での合宿を選ぶようになったのだろうか。
最大の要因は、市が事前のリサーチでターゲットユーザーを明確にしたことだ。どういう選手たち、どういうチームにここに来てほしいのか――そこを事前にしっかりと調査し、それを元に東御という合宿地を知ってもらう。それを徹底できたことが、ここまでの成功の要因のひとつだったという。