“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「僕に柏からオファーが来るなんて」
“代役”川口尚紀が掴み始めた自信。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/08/31 08:00
7月31日に柏へ加入した川口尚紀(中央)。岐阜戦ではクリスティアーノのスーパーゴールをアシストするなど、早くもチームにフィットし始めている。
小池の海外移籍で得たチャンス。
当時、6連勝を飾っていた柏にとって、右サイドバックの補強は急務だった。以前から噂をされていた不動の右サイドバック小池龍太の海外移籍が現実味を帯びたからだった(7月30日にベルギー2部リーグのロケレンへの完全移籍が発表)。
「(驚きと)同時に嬉しいオファーでした。この状況でありながら、僕を見てくれて、評価してくれたことが本当に嬉しかった。もちろん新潟で生まれ育った人間として、多くの人にお世話になった分、レギュラーを取り返したい気持ちはありましたが、新たな環境でやることでもっとレベルアップできると思ったし、何よりレイソルという日本では有数のクラブでやれることに大きな意義を感じた。
レイソルは今はJ2ですが、戦力的にはJ1と遜色ないクラブだと思っているので、僕もここで上を目指したいと思えた」
比較されることはわかっている。
当然、単に柏だから飛びついたわけではない。今回の移籍が持つ意味の重さは重々に理解をしていた。周りからは「小池龍太の代役」として見られ、それ相応の活躍ができなかったら、「獲らない方が良かった」という烙印を押されるリスクもある。それを川口は承知の上で移籍する覚悟を決めた。
「小池選手と言えば、Jリーグの右サイドバックといえばと聞かれたら、すぐに名前が浮かぶ選手。攻撃面ではスピード、タイミングが非常に良い。クサビのボールの質が非常に高くて、伊東純也選手やクリスティアーノとの連携でサイドを制圧していたイメージ。その穴を埋めるために僕が呼ばれたわけですから、周りは小池選手の尺度で僕を見る。
僕は小池選手とはタイプも違うし、すべて重ね合わせる必要はないとは思っているけど、相当な覚悟を持って移籍をしないとダメなことはわかっていました。
前回、清水に移籍をした時は『ここで成長する』というか、『試合に出続けて、経験を積む』という感覚でした。でも、今回は違う。『プロサッカー選手を続けていく上で、ここでダメだったら個人としても上に行けない』という強烈な危機感を持ってここに来ました」