“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“止まらない柏”に緻密な連動性。
瀬川祐輔「レイソルはもっとできる」
posted2019/08/27 20:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「突き進め柏! 止まらない柏!」
このチャントにあるように、柏レイソルの勢いが止まらない。
8月25日の第29節FC岐阜戦を4-0で制し、これで第19節ジェフユナイテッド千葉戦から“リーグ戦11連勝”という破竹の快進撃。今、J2の首位をひた走っている――。
昨季、J2降格の憂き目にあった柏は1年でのJ1復帰に向け、選手の流出を最小限に留めた。J2トップレベルの戦力で開幕前から昇格の第一候補と目されていたため、柏が首位を走っていることに大きな驚きはないだろう。
だが、J2はそんな簡単なリーグではない。
歯車がひとつでも狂えば、トップクラスの戦力を誇っていたとしても、1年でのJ1復帰どころか、数年間チームとして停滞してしまうパターンも少なくはない。「J2沼」や「J2は魔境」とサポーターたちが揶揄するように、J2を戦い抜くことは決して容易ではないのだ。
快進撃につながる瀬川の信念。
事実、柏もシーズン序盤は苦しんだ。相手チームは守備を固め、キーマンを徹底的に潰してくる。個のレベルはJ1より劣れど、徹底した戦いを見せてくる相手に攻撃がかみ合わず、停滞感が生まれた試合も多々あった。リーグ開幕4連勝こそ飾ったが、第5節と6節で連敗、第8節から11節まで4戦連続引き分け、その後の第12節では今季J2に昇格した鹿児島ユナイテッドに1-2で敗れるなど、一時は大きく順位を落とすこともあった。
しかしチームは、そこからV字回復以上の快進撃を見せる。しかも1試合2点以上の複数得点の試合が格段に増えた。ただの好調だけではないこの変化はなぜ起こったのか。注意深く見てみると、MF瀬川祐輔の存在に目が留まった。
瀬川はエースのクリスティアーノに次ぐ得点源として期待されていたが、第2節の町田ゼルビア戦で今季初ゴールを挙げた以降は得点から遠ざかっていた。左サイドハーフとしてボールを受けることに注力し過ぎて、持ち味である裏抜けや動き直しを結果に反映しきれていないような印象を受けた。
実際にスタメンから外れたこともあったが、それでも瀬川は「もっとリスクを負うべきところは負ってもいい。そうしないと攻撃に厚みが出ない。自分がそれをやり続けることで、いつかこのチームが持っているポテンシャルが引き出されると思っています」と、冷静にチーム全体と自分自身を分析し続け、その上で自分のプレーに信念を持っていた。