“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“止まらない柏”に緻密な連動性。
瀬川祐輔「レイソルはもっとできる」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/08/27 20:00
柏の11連勝に貢献するMF瀬川祐輔。1年でJ1復帰を果たすべく、さらなる進化を誓った。
4-0のスコアに裏にある柏の強さ。
そして、3-0と一気に岐阜を突き放してから後半に入ると、次は瀬川がチームを引き締めた。後半立ち上がり、ファールでプレーが途切れると、瀬川はすぐに中央の大谷のもとに駆け寄り、両手でジェスチャーを入れながら確認をしていた。
「後半から投入された相手3トップ右の8番(フレデリック)が、ワイドに張ってもらうタイプだったので、前半と同じように僕が中に絞ってから前に出ると、一瞬だけ左サイドバックの太陽のところで2対1の局面を作られてしまうようになったんです。8番はフレッシュだし、左利き特有のカットインからのシュートを持っていたので、前半のままの守備のやり方ではなくて、外をけん制しながら守備をして、太陽のところで数的不利を作らせないようにしたいとタニくん(大谷)に話しました」
すぐに相手の攻撃のアプローチを見抜き、守備の修正を図ったのだ。
52分にはスーパープレーを見せた。右FKを得ると、「僕の前がガラ空きだったので、呼びこんでシュートを打とうと思ったのですが、クリスがニアに蹴った瞬間、周りを見たら自分ともう1人しかいなくて、ボールを奪われたら2対5くらいのピンチになると思った」とすぐにポジションを下げた。瀬川の予測通り、岐阜は数的優位の状態でカウンターを仕掛けてきた。
「ボールホルダーの塚川選手には太陽が時間を遅らせていたので、僕は塚川選手の視線をずっと見て、どこに出してくるかを探った。そうしたら自分の奥を見ていたし、相手のFWが2枚くらい自分の裏にいると把握していたので、そこにロングボールがくると確信して、自陣に全速力で走りました」と、裏に抜け出したFWジュニオール・バホスへのロングボールに一瞬早く触れてクリア。瀬川の機転がなかったら決定的なピンチになっていた。
結果は4-0という圧勝に見えるスコアだが、岐阜にもチャンスはあった。だが、どれだけ点差がついてもこうした細かい守備の連携、集中を怠らないことに、今の柏の強さの秘密がある。
「規格外」の2人を生かす。
決してクリスティアーノ、オルンガというJ2では「規格外」と呼ばれる2人の力だけでこの快進撃が続いているわけではない。2人を支える周りの連動、統一された意識と自己犠牲があってこそ、彼ら2人が相応の力を発揮できている。その象徴的な存在が瀬川祐輔だというのが筆者の認識だ。
「チームとしてポゼッションの部分ではもっとよくなると思う。僕も含めて、選手のアイデアをもっと出し合って、ピッチで表現をしていかないといけない。ミカとクリスをもっと効果的に活かしながら、逆に彼らの前への推進力が止められた時に、僕や任くんやボランチ、両サイドバックが攻撃にもっと関わって、遅攻でも切り崩せるようになれば、より相手にとって脅威の存在になれる。レイソルはもっとできるんです」
瀬川は岐阜戦後、こう言い切った。
この言葉は、柏が今後より独走態勢に入り、もし1年でのJ1復帰が果たせた場合、来季にさらなる上を目指すための重要なベースとなるものでもある。
11連勝を手放しで喜ぶのではなく、チームの伸びしろへの探求心を高めるキッカケに変えていく。柏レイソルの真価はまさにこれからにある。