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野球人口の急減が日米で進行中。
MLBは対策に本気、では日本は?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2019/08/26 08:00
野球少年たちに夢を与えるのはメジャーリーガーの仕事である。ダルビッシュ有も、その仕事を楽しんでいる。
ダルビッシュもプロ・アマ交流に献身的。
それに気づいた日本のリトルリーガーが、とても謙虚にちょこんと帽子のひさしに手を当てる。メジャー通算25勝右腕は、それで自分のはしゃぎっぷりが大げさだったことに気づき、「お、おう……」とばかりに、少し慌てた素振りで帽子を取った。
2人が交わしたメッセージはおそらく、「ありがとう」と「You're welcome(どういたしまして)」。メジャーリーガーとリトルリーガーの立場が逆転していた。
もちろん、リトルリーガーにとっては、激励に来てくれたメジャーリーガーこそがヒーローである。
カブスのダルビッシュ有投手を間近で目撃した日本の少年は、思わず「本物だ!」と飛び跳ね、素直に喜びを表現していた。
「僕も中3の時、ボーイズリーグでサンフランシスコに2週間ぐらいホームステイする機会があって、とても良い経験になった。彼らは小学生だけど、せっかくの機会なので良い経験をして、楽しんでいって欲しいと思う」
とダルビッシュ。献身的だったのは彼だけじゃなかった。カブスの主砲アンソニー・リゾ一塁手やパイレーツの主砲ジョッシュ・ベル一塁手を筆頭とする両チームの選手たち全員が、彼ら自身の試合前の貴重な時間を「プロアマ交流」のために費やした。
コミッショナーがダルに駆け寄って……。
「この素晴らしいゲームをプレーしたい子どもたち全員に、その機会を与えることが大事だというメジャーリーグの信念を、この組織(リトルリーグ)は共有してくれているのです」
そう言ったのは、メジャーリーグの「最高責任者」であるロブ・マンフレッド・コミッショナーだった。
現在のメジャーリーグ繁栄の貢献者である前任のバド・セリグ氏から重要な任務を引き継いだ後継者である。カブスのバスが到着するや否や、ダルビッシュが乗り込んだカートに素早く駆け寄り、リトルリーガーたちへの激励について感謝の意を述べたという。
「驚くことはなかったですね。あの人はワールドシリーズのグリエルの時も、わざわざ僕のところに来て話をしてくれたので」とダルビッシュ。
(2017年のワールドシリーズ第3戦で、ダルビッシュから本塁打を打った元DeNAのユリエスキ・グリエルが、両目をつり上げてアジア人を蔑視する仕草をした時のこと。グリエルはその後、コミッショナー裁定で公式戦5試合の出場停止処分を受けている)
メジャーリーグのトップが、1人の日本人選手のために示したリスペクト=敬意。それはその場にいたすべてのメジャーリーガーにも等しく示された。