“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
北越が青森山田をPK戦の末、撃破!
猛暑のインターハイで何が起きたか。
posted2019/07/29 21:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
沖縄で7月26日に幕を開けたインターハイ男子サッカー競技。3回戦が終わり、ベスト8が出そろったが、3回戦で“今大会最大”とも言っていいほどの番狂わせが起こった。
昨年度の選手権優勝校であり、ユース年代最高峰のリーグであるプレミアリーグEASTで無敗(8勝2分)で首位を独走する青森山田を、新潟県代表の北越が1-1(35分ハーフ)のPK戦の末に下したのだ。
プリンスリーグ北信越に所属する北越にとって、青森山田はまさに「格上」。だが、彼らは立ち上がりからその大きな看板に臆することなく、真っ向からぶつかっていった。
「青森山田、青森山田と周りは言いますが、同じ高校生。あまりリスペクトしすぎてしまっても良くないですし、ここを突破できたら僕らの存在を全国に知ってもらえることになると思っていました」
こう語ったのは北越のキャプテン・藤吉玲依。空中戦の強さと精度の高いクロス、時にはゴールにまで迫るプロ注目の右サイドバックだ。この試合でも立ち上がりから高い位置をとって、積極的に攻撃参加した。
PKを外すも、仲間のおかげで「冷静に」。
16分、先にチャンスを掴んだのは北越だった。右サイドからFW田中翔がドリブル突破を仕掛けると、相手DFにファールで倒されてPKを獲得。いきなりの先制のチャンスを掴みとった。
しかし、キッカーに名乗り出たエースストライカー庄内碧のキックは、青森山田のGK佐藤史騎が弾き出し、右ポストに。再び庄内のもとにこぼれてきたが、ガラ空きのゴールに放ったヘッドは枠をそれてしまった。優勝候補を相手に、とてつもなく大きなチャンスを逃してしまった。
落胆の色が出るかと思われたが、北越の選手たちは前向きな姿勢を見せる。
「ミスは誰にでもあることだし、ここで碧が落ち込んでしまったり、消極的になってしまったら、うちの攻撃がうまくいかなくなってしまう。しかも相手が青森山田だからこそ、ここで弱みを見せてしまったらつけ込まれてしまう。すぐに気持ちを切り替えるようにみんなで声をかけた」
そう語ったのはMF浅野俊輔だ。2度のシュートを外した庄内に対し、真っ先にチームメイトたちが駆け寄り、笑顔で肩を叩いていた。
「譲ってもらったPKだし、外した時は一瞬、頭の中が真っ白になったんですが、みんなが『次に決めればいい』とか、『切り替えろ、お前なら必ず流れの中で決められるから』と声をかけてくれたことで、冷静さを取り戻すことができた。仲間のおかげです」(庄内)
前半終盤には庄内が起点となってMF五十嵐翔がシュートを放つなど、徐々に北越のショートパスとドリブルを駆使したアタッキングサッカーが形になり始めていた。