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「浦和の特別」であり続けた10年。
山田直輝の忘れられない”あの日“。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byGetty Images
posted2019/07/28 08:00
浦和レッズの象徴の1人だった山田直輝。29歳、再び湘南ベルマーレのユニフォームを身にまとう。
2度目の期限付き、違う空気感。
31人の大所帯でスタートしたシーズン、山田は紅白戦に入れないこともしばしばだった。オリヴェイラ監督は決して選手を悪く言わなかったが、その序列が低いことは明らかだった。
結局、ほとんど出場機会のないまま、オリヴェイラ監督から大槻監督への交代があった。それでもピッチに立つチャンスは訪れず、7月3日に天皇杯2回戦の流通経済大戦でスタメン出場し、後半15分に交代したのが新体制での初出場であり、ラストマッチになった。
この試合後、彼は「後半が始まって少しして、全く足が動かなくなってしまった。初めての体験で、ゲーム体力の大切さを思い知った」と話した。
そうした経緯もあったから、冒頭にも記したように夏のウインドーで違うチャンスを求めること、クラブが送り出すことにも正当性があると感じられた。
ただ、前回の期限付き移籍と違う空気感があるのは、クラブから発表された本人のコメントからもうかがい知ることができる。
「浦和レッズは僕の愛するチームであることは変わりません。これからはみなさんと同じ一サポーターとして、応援していきます。まだまだサッカー選手として成長する山田直輝を少しでも応援していただけたら嬉しいです。本当にありがとうございました」
大槻監督は世代交代を掲げている。
もし「期限付き」の文字を認識しないままコメントを読んだなら、完全移籍でチームを離れる選手のものにしか思えないだろう。
こうした移籍の定型文である「成長して戻ってくる」という意味合いは見られず、むしろ表現の端々から浦和でのキャリアが彼の中で過去形になっていることが感じられてしまう。
期待を受け続けてきた彼も、29歳の選手になった。大槻監督の就任時にクラブは「世代交代」をキーワードの1つに掲げている。山田がどちらの立場になるかと考えれば、その答えもまたハッキリしている。