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ブラジルに完敗したアルゼンチンが、
現状維持を選ばざるを得ない理由。

posted2019/07/06 17:00

 
ブラジルに完敗したアルゼンチンが、現状維持を選ばざるを得ない理由。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

ブラジルに敗れ、コパ・アメリカでは3位決定戦に回ったアルゼンチン。今後の強化も不透明な状況が続く……。

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藤坂ガルシア千鶴

藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia

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Uniphoto Press

 コパ・アメリカ準決勝で宿敵ブラジルに敗れ、悲願の「26年ぶりのタイトル獲得」に及ばなかったアルゼンチン。だが意外なことに、昨年のロシアW杯後と比較した場合、代表チームに対する国内の反応は冷静だった。

 理由はいくつかある。

 まず、前回のコラムでも書いたように、リオネル・エスカローニ監督以下一部の選手たちが事前に「我々は優勝候補ではない」と本音を語っていたこと。

 3月に行われたベネズエラとの親善試合で初めてエスカローニ監督の代表に招集されたリオネル・メッシ、今大会がロシアW杯後1年ぶりの代表復帰となったセルヒオ・アグエロとアンヘル・ディマリアなど、レジェンドたちと新代表メンバーとの事前の「リハーサル」が不十分であったこと。

 エスカローニにとっては「監督業初となる公式大会」だったこと。

 チームの本来の目標がこの時点でのタイトル獲得ではなく、来年3月から始まるW杯予選に向けた基盤作りであること……。

就任間もない監督に優勝は酷……。

 そうした要素のほかにも、ファイナリストとなったブラジルのチッチ監督は2016年6月から、ペルーのリカルド・ガレカ監督は2015年2月からそれぞれW杯予選と本大会を経て代表チームの指揮を執り続けている事実を考慮すると、スタート地点にあるエスカローニ監督のチームに今大会の優勝を求めるのはあまりにも酷だったのである。

 もちろん、優勝の可能性がゼロだったわけではない。テクノロジーの発達と世界規模のデータベースの普及のおかげで相手チームや選手の分析が容易になった現在のサッカーにおいても、実際の試合では予期しなかったことが起きる。

 どのチームもスカウティング担当者が徹底した下調べを行なっており、某国の代表チームで戦術分析を担当するスタッフも今大会が始まる前に「相手がピッチに12人以上の選手を出してこない限り、サプライズはない」としながらも、「それでも結果がわからないのがサッカーの面白さ」と話していた。

【次ページ】 不可解な采配にメディアもファンも反論。

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