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セレソンを支える頼もしい主将。
36歳ダニエウ・アウベスの味わい。
posted2019/07/06 10:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Getty Images
ブラジルとアルゼンチンが激突したコパ・アメリカ準決勝。その日、昼前に宿を叩き出された。行くところもないので、スタジアムに向かうことにした。
キックオフは夜9時30分。恐ろしいことに、7時間近くスタジアムの周りで過ごさなければならない。
とはいえ、それほど退屈な時間にはならなかった。
昼過ぎになるとスタジアム周りには早くもファンが集まってきて、ひたすらビールを飲み始める。そしてビールで調子が出てくると、どこからともなく歌合戦が始まった。
ブラジル人が「メッシは(フル代表では)カップを持ってない!」と歌えば、今度はアルゼンチン人が「マラドーナはペレより偉大だ!」と返す。すると今度はブラジル人が「ペンタ・カンペオン(5度の世界王者)」と気勢を上げ――。
次から次へと伝統の歌、かけ声が飛び出す。
一番楽しそうなのは試合前かも。
レパートリーがたくさんあるという事実は、両国がサッカー界で豊饒な歴史を積み重ねてきたことを物語る。次第にふくれあがる大群衆の歌合戦を、うらやましそうに見つめるペルー人やチリ人の表情が印象に残った。
ブラジル人もアルゼンチン人も、とにかく嬉しそうに飲み、歌い、飛び跳ねている。ワールドカップでも感じることだが、いちばん楽しいのは試合前かもしれない。
1世紀を超えて勝った負けたを繰り返している彼らは、試合が始まったら2時間後には必ずどちらかが負けるという勝負の厳しさを知っている。だから、子どものようにはしゃぎまわるのだろう。
110年目のクラシコは、開催国ブラジルが凱歌を上げた。