“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
横浜FM山田康太「次は自分らしさを」
U-20W杯で得た勝利への執念と自覚。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/06/26 17:00
天野純(左)とコミュニケーションを取る山田康太。彼の成長は、J1制覇を目指すチームにとって大きな力となるはずだ。
強固な松本を崩すためのセルフジャッジ。
「ポストに当たったシュート以降、攻撃が停滞をしてしまって、自分と純くんが攻撃に関われない時間が増えてきていたんです。なので、変化が必要なんじゃないかと考えるようになった。
監督は普段から2ボランチとアンカーを使い分けていて、今日のシステムは純くんと並んだ2シャドーでしたが、自分がちょっと下がって(アンカーの)喜田(拓也)くんと並ぶ形にした方が、松本のブロックを崩せるんじゃないかと思ったんです。そこで、純くんに『ボランチの位置に下がってもいいですか?』と伝えました」
ゴールに近い位置で結果を出したいという思いは当然、強かった。
しかし、5バックの前にボランチ3枚を敷く強固なブロックで臨んだ松本相手では、ボールを受けてもすぐに囲まれてしまう。さらに、横浜FMは両サイドバックが中に絞ってくることが多いため、中央に人が集まりすぎて、攻撃の停滞を招きやすくなる。幅を使えないことで相手にボールを奪われると、一気にカウンターを浴びるリスクも高い。
そこで、山田はボランチの位置でパス回しに加わり、相手を左右に揺さぶり、そこから縦パスを入れて崩した方が得策だと、試合中に自らジャッジしたのだった。
山田自身がゴール前に入る回数は減ったが、「左で繋いで、右に自分が展開するシーンも狙い通り出せた」と語ったように、喜田とともにボールを動かしたことで、停滞していた攻撃にリズムをもたらすことができた。
後半からはトップ下で出場。
後半、山田は再びゴールに近いトップ下の位置に戻った。これはアンジェ・ポステコグルー監督が喜田と天野をダブルボランチに置き、山田を一列前に置き直したからだった。
「監督も前半の僕のプレーを見て『ダブルボランチの方がいい』と判断してくれたのかなと思います。具体的に何か言われてはいないですが、後半開始からフォーメーションを変えたのは、そういう判断をしてくれたのだと思っています」
山田の判断が指揮官にも影響を与えた。冷静に戦況を捉え、それを自分のプレーに反映させるという、高いインテリジェンスを持つ彼だからこそできた、チームの勝利を最優先した機転だった。
結果としてチームは80分に決勝ゴールを挙げる。FW大津祐樹の折り返しをFWエジガル・ジュニオが鮮やかな反転シュートで決めて、1-0。勝利を収めることができた。
しかし、試合後のミックスゾーンでの山田の表情は晴れやかではなかった。