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大谷翔平のサイクルは球史に残る?
ノーヒッターよりレアな“勲章”か。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/06/19 08:00
絶好調モードの大谷翔平。サイクル達成後には現地の子どもたちからサインをねだられていた。
1800年代から記録が残っている勲章。
サイクルの記録を調べていて興味深かったのは、他の多くの公式記録が1908年以降と注釈されているのに、サイクルとノーヒッターに関してはベースボール黎明期の1800年代から記録が残っていることだ。
それはきっと、両方の記録が当時からレアで、打者と投手の「勲章」のように見られていたからではないかと思う。
サイクルは1908年以前に通算52度、ノーヒッターは同53度とほとんど同じ数だけ記録されているから、当時はまさに「サイクルって、ノーヒッターみたいなもの」だった。
中でも1888年、最古のサイクルを記録したカリー・フォーリー(今はマイナーリーグ球団として知られるバッファロー・バイソンズ)という選手が、面白い。
なぜなら、アイルランド生まれの移民二世だったこの選手、どうやら大谷と同じ「投打二刀流」をやっていたらしい(baseball-almanac.comによる)。
長打が少ないフォーリーの快挙。
1879年、23歳の時にボストン・レッドキャップスでデビューしてからの2年間、フォーリーは通算57試合(44先発)に登板して23勝23敗という投手成績を残しながら、一塁手や外野手としても79試合に出場し、478打数143安打というなかなかの好成績を残している。
ただし、サイクルを達成したのは投手としてはわずか1試合、外野手として84試合に出場した1888年だった。
フォーリーは大谷と同じように初回の第1打席で本塁打を放つと、2回に三塁打、5回に二塁打(なお大谷は第2打席で二塁打、第3打席で三塁打)を放ち、やはり大谷と同じように、7回の第4打席でシングルヒット=単打を放ってサイクルを達成している。
彼はこの年、打者としての最高成績(打率.305、出塁率.329、長打率.402)を残しており、104安打の内訳は、81単打、16二塁打、4三塁打、3本塁打と長打は少なく、すべてがタイミングよく出たのが5月25日だったようだ。
当時は「指名打者」も「投手分業制」もない時代だったので、きっと出場選手が足りなくて「投打二刀流」の選手は多かったのだろうと思ったが、どうやら違う。
サイクルを記録した選手でフォーリーのように10試合以上に登板した選手は少なく、殿堂入り選手で、当時史上4人目(5度目)のサイクルを記録したジム・オルークという選手も、投手としてはキャリア中盤に6試合に登板したのみだった。