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大谷翔平のサイクルは球史に残る?
ノーヒッターよりレアな“勲章”か。
posted2019/06/19 08:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
つけっ放しにしていたテレビから、「イチロー」という声が聞こえたのは、6月15日の午後だった。
声の主はイチローの(数ある内の1人の)元チームメイトのエリック・バーンズ。ソフト・モヒカンがトレードマークの現解説者である。
MLBネットワークの番組で取り上げられていたのは、エンゼルス大谷翔平のサイクルだった。バーンズは大谷がいかに素晴らしい打者であるかを熱弁しているうちに、同じ日本人である「イチロー」に辿り着き、こうまくし立てた。
「ショーヘイ・オータニは、パワーのあるイチローみたいなものだ。でも、実際のイチローはパワーもあったんだ。信じられないかも知れないけど、打撃練習では僕が今まで見た誰よりもホームランを打っていたのだからね。イチローがサイクルを達成してなかったってことの方が僕にとっては驚きだよ」
テレビに出ていた他の若い共演者は、きょとんとしていた。
まるでそれが放送事故か何かのように。
ノーヒッターみたいなものでしょう?
無理もない。バーンズの話を聞いていた人々はスタジオで番組を進行させる人たちで、元野球選手でもなければ、イチローが現役時代に所属していたマリナーズやヤンキースやマーリンズのテレビ中継局の人間でもない。
現役時代、イチローが打撃練習で豪快な打球で「柵越え」を連発していたのは、その現場にいたメディアの人間なら誰もが知ることだが、その現場を見たことのない人々にとっては実感のないことだ。
面白かったのは、出演者の1人がそれを「Really(本当)?」と軽く受け流した後で、無邪気に「サイクルって、ノーヒッターみたいなものでしょう?」と尋ねたことだった。