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森重真人が今、明かすW杯落選。
昌子源へのLINEとJ1制覇への決意。
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/06/21 11:45
ロシアW杯落選から1年、新たなモチベーションを見つけた森重真人。J1制覇へ向けてFC東京を牽引する。
ブラジル大会での苦い経験。
それから半月ほど時計の針を戻す。'18年5月末、落選した森重に会った。向き合うと開口一番こう言った。
「自分のサッカー人生。第一章は終わりましたよ。これからは第二章のスタート。楽しみにしてください」
前回のブラジル大会では初戦に先発するも、悪夢の逆転負け。滑り込みでつかんだスタメンの座を明け渡し、残り2試合はベンチを温めた。
「自分はW杯に出るのを目標にしていた。だから、勝つところまでの意識、準備をしていなかった。次は違う。その準備をしたい」
ロシア大会では世界の猛者を抑える――。その一点に集中して4年間を費やした。肉体、食事、思考、生活。変化を恐れず、試し、実験を繰り返した。リベンジの場を得るため。大舞台での勝利を味わうため。
だからこそ、続けて聞いた言葉には少しだけ苦みが含まれていた。
「最後、(西野監督に)練習でじかに見てほしかった。競い合いたかった。あえて言うならそれだけですかね。心残りは」
ラストレースにさえ参加できず……。
W杯イヤーの昨年4月。ハリルホジッチ監督から西野朗監督への電撃的な監督交代劇があった。最終メンバーの見極めに残された時間は1カ月余しかなく、変則的な選考になった。'18年5月18日の第1次選考では27人が選出され、ラストサバイバルを勝ち抜いた最終メンバー23人が同31日に発表された。
森重はその「ラストレース」にさえ参加できなかった。アジア最終予選では全10試合中7試合に先発。中軸を担い、出場権獲得に貢献した。何よりも4年間積み上げたものを確かめたかった。だが、それは叶わなかった。残された道は、負傷によるメンバーの入れ替えだけ。
「最後まで何が起きるか分からないから。第一章はまだ終わらせんといて」
森重にそう伝えると、寂しげな笑みを浮かべてこう返ってきた。
「もうぎりぎりっすね。でも、まだ小さな、小さな火。いや、燃えかすの火は残っているかな」
もう火は消えたと思っていた。だから、予想外だった。23人が最終確定となるロシアW杯コロンビア戦の前日、扉が閉じる直前まで体と心のスイッチを切らさなかったことが。