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森重真人が今、明かすW杯落選。
昌子源へのLINEとJ1制覇への決意。
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/06/21 11:45
ロシアW杯落選から1年、新たなモチベーションを見つけた森重真人。J1制覇へ向けてFC東京を牽引する。
消えなかった森重の「火」。
しかも、「燃えかすの火」を消さず、つなげた人物がいた。森重がLINEでメッセージを送ったのは昌子源。CBの枠を最後まで争い、しかも、追い抜かれた5学年下の後輩だ。
なぜなのか。あれから1年。封印を解いてくれた。
「源はいいやつですし、かわいい後輩。人への思いやりもある。もう自分が出られないからって怒りをぶつけてもしょうもないでしょ。源は純粋に向上心があって熱いし、戦ってほしかった。だから『つかむチャンスがある。だから諦めるな』って送った気がする」
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選んだのは虚栄心よりも信頼。メッセージを送った時点では、“鉄板”CB吉田麻也のパートナーは定まっていなかった。昌子にとっては、日の丸を背負っての初めて立つW杯の大舞台。しかも、チームは直前のテストマッチで結果が出ず、「おっさんジャパン」と批判、逆風にさらされていた。
だが、昌子は森重が渇望しても手にできなかった「競争」という土俵に上がっている。何よりもチャンスがある――。その手と足には可能性が詰まっている。『諦めるな』。メッセージの裏には、その思いが込められたように思う。
昌子の背中を押したメッセージ。
現代のテクノロジーは偉大だ。東京から日本代表キャンプ地のカザンまで、約6800km。遠く離れてその熱は伝播した。本大会で1、2戦目に先発した後、昌子は感謝を込めて明かした。
「W杯前に森重くんからもLINEが来たんですよ。ちょっと内容は言えないですけど。内容も含めて、すごくうれしかった。本当はここにいてもおかしくなかった人たちのためにも、自分がやらないといけないというのはすごく思う」
森重の言葉は、背負わせるのではなく、後輩の背中を押した。昌子の表情が、蛹が蝶になるように劇的に変わったように見えた。不安は消え、勇気、覇気に満ちていた。後輩は前回大会の先輩のように大会直前でスタメンの座を勝ち取った。違ったのは隠し味となった先輩のメッセージか。
だからなのか、あのベルギー戦。昌子が高速カウンターをあと数歩の差で止められず、右の拳を何度もロストフのピッチにたたきつけた姿が今でも鮮明によみがえる。