「フルスイングは、ただ強く振る、ただのスイングになっちゃう。自分は、ボールに対してしっかり強くコンタクトしていくということを求めています」

　吉田のスイングは、向かってくるボールありきで突き詰められてきたのだ。

吉田正尚にとってホームランとは？

　加えて、トレーニングやケア、食事面の充実で、年々筋肉の鎧は厚みを増した。大幅に筋量が増え体脂肪は減った。オリックスのマッチョキャラとしてファンに浸透し、「正尚チャンスダンベル」なる応援グッズが売れ行き好調だ。

　今年3月には、侍ジャパン強化試合で満塁弾を放ち、東京五輪に向けた新たな4番候補としてその名を知らしめた。

2019年3月、日本×メキシコ戦で　©Getty Images

　吉田正尚にとってホームランとは？　と尋ねると、こう答えた。

「“自分だけの空間”っていうんですかね。1人で1点取れるし、球場全体の雰囲気も変わる。野球は間のスポーツなので、そういう意味では（本塁打は）自分の時間になる、みたいな感覚ですね」

　今年、吉田は本塁打1本につき10万円をNPO法人「国境なき子どもたち」に寄付することを決め、自身の本塁打に新たな意味を持たせた。

　球場を“吉田正尚の空間”にするために。その探究心が尽きることはない。