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田口成浩と比江島慎の「移籍1年目」。
難しい時期を乗り越え、開花の時へ。 

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石川歩

石川歩Ayumi Ishikawa

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photograph byB.LEAGUE

posted2019/06/15 17:00

田口成浩と比江島慎の「移籍1年目」。難しい時期を乗り越え、開花の時へ。<Number Web> photograph by B.LEAGUE

田口成浩と比江島慎はともに来季チーム残留を発表した。田口は千葉に悲願のBリーグ制覇をもたらせるか。

ターニングポイントは大野HCの言葉。

 田口と同じポジションには、2018-19シーズンのベスト3P成功率賞を受賞した石井講祐がいた。6シーズン千葉に在籍した石井はチームの主軸であり、千葉移籍後の田口のプレータイムは秋田在籍時から半分程度まで減っている。

「もちろん、試合に出られないと辛い。でもそれは、石井さんがしっかりディフェンスをして試合に出て結果を残しているから。そして僕が試合に出られないのは、ディフェンスができていないし、シュートも入っていないからだと自覚がありました。だったら、今やるべきことはディフェンスの強化だと。

 移籍してからは、足りていない部分を見つけて強化していくのに精一杯で、全く余裕がなかった。年明けに大野(篤史ヘッドコーチ)さんから『シゲ(田口)は、ディフェンスで力が入りすぎだよ。周りを見て、力を抜くところは抜いて』と言われた。その言葉で、頑張るタイミングを計りながら駆け引きをするディフェンスの考え方に変わったんです。それが千葉でのターニングポイントでした」

 話に夢中になるとタメ口になり、ハッと気がついて敬語に戻す……こんな繰り返しで田口との会話は進む。目の前のことに全力で向き合い、相手を楽しませようとする明るいキャラクターは、チームに気持ちのいい変化をもたらした。

「タレント揃いの千葉で、僕の濃いキャラクターをどう入れていくか考えました。秋田にいたときは『なんだこの暗いチームは!』と思って千葉を見ていたから(笑)、今は練習でも試合でも、すごいプレーには『うぉー!』って立ち上がるの。これは自分の仕事というより自然に出る行動だけれど、チームの雰囲気の良さにつながればいいなって思う」

「おい見とけよ、オレがいるんだぞ」

 田口は、昨シーズンまでキャプテンを務めた秋田で、B2降格とB1昇格を経験した。チーム唯一の秋田県民として、結果を求められる重圧は大きかった。

「秋田では勝って県民に喜んでほしい、秋田の名前を全国に響かせるために勝たなきゃいけないという思いが強かった。自分のことよりも、勝つためにチームが1つになることを考えていて、頭には常にB2がよぎっている……もうね、降格・昇格プレーオフはイヤなものですよ。ファイナルでこの経験を活かさない手はないでしょう?

 だから余裕っす。石井さんの3Pシュートが警戒されて打てないときは、『おい見とけよ、オレがいるんだぞ』ってコートに出て行こうと思っていた。日本最大のバスケの祭りで『おいさー!』してやるってね」

 千葉の19点ビハインドで始まったファイナル4Qで、大野篤史ヘッドコーチは「残り5分で1桁差にしよう」と選手たちに伝えた。彼らはその言葉通り、オフィシャルタイムアウトまでに59-64と、東京に5点差まで詰め寄る。

「1桁差なら9点でもいいわけです。それが5点差まできた。順調だ、予定より早い、これはイケる。コートに出るときは、自分たちが勝つと信じていました」

【次ページ】 「何度コケても僕は立ち上がるだけ」

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