バスケットボールPRESSBACK NUMBER
田口成浩と比江島慎の「移籍1年目」。
難しい時期を乗り越え、開花の時へ。
text by
石川歩Ayumi Ishikawa
photograph byB.LEAGUE
posted2019/06/15 17:00
田口成浩と比江島慎はともに来季チーム残留を発表した。田口は千葉に悲願のBリーグ制覇をもたらせるか。
どん底で本田圭佑に伝えられた言葉。
2018年12月、W杯予選カザフスタン戦の勝利後、オーストラリアへ帰る比江島の気持ちはどん底に落ちていた。ブレッツでは、ほとんどプレータイムをもらえない状況が続いていたのだ。エースである日本代表からベンチ入りも危ういチームへ。落差は大きかった。
「試合に出られないのにオーストラリアに帰ると思うと、落ち込みました。あのチームに僕がいる意味はあるのかと悩んでいて、辞めて日本に帰ろうと思っていた。そのとき、本田圭佑選手と話す機会がありました。
日本のバスケ選手が海外挑戦するのは珍しい状況で、僕がその環境にいることを羨ましいと言われたんです。本当にポジティブな人で、海外生活に慣れるための具体的なアドバイスももらいました。そこから気持ちを持ち直して、チームメイトとも仲良くなって、海外生活が楽しくなってきたときに、解雇されたんです」
帰国して栃木に入団した比江島は、チームに途中加入する難しさに戸惑う。安齋竜三ヘッドコーチは、ブレックスメンタリティを体現するディフェンスを比江島にも求めた。
「栃木に来てからは、特殊なチームルールを覚えるのに必死で、オフェンスに余裕を持ってプレーできない時期がありました。選手である以上、試合の最初から出るのは一番の希望だけれど、オフシーズンから一緒に練習していないし、途中加入でいきなりスタメンは無理だと思っていた。それに、僕が控えでいたら相手チームは怖いと思う。
今シーズンは、スタメンではないことを受け入れました。チームのスタイルには徐々にフィットしていって、CSでは100%に近いところまで持っていけたと思います。レギュラーシーズンからずっとチームの雰囲気が良くて、CSに入ってからは、全員の集中力がさらに増していた。優勝できるメンバーが揃い、結果も出している。メンタルを整えれば優勝できる、という状態でCSを迎えました」
「僕がもっと打たなきゃ、攻めなきゃ」
セミファイナル2試合目の4Qは、栃木の13点ビハインド、鵤誠司が左足を痛めてベンチへ下がり、富樫を抑えてきた遠藤祐亮が4ファウルという状況からスタートした。
「4Qのコートに出るときも、決して1秒たりとも諦めていなかったです。残り時間と点差を考えるとすごく厳しい状況ではあったけれど、まだいける、僕がもっと打たなきゃ、攻めなきゃいけない、としか考えていなかった」
4Q残り1分12秒、リバウンドをとった比江島はファストブレイクでシュートを決め、ファウルももらってバスケットカウントをもぎ取る。W杯予選から戦い続けてきた日本代表のエースのスキルと想像力は、栃木の勝利へ希望をつないだ。