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田口成浩と比江島慎の「移籍1年目」。
難しい時期を乗り越え、開花の時へ。
text by
石川歩Ayumi Ishikawa
photograph byB.LEAGUE
posted2019/06/15 17:00
田口成浩と比江島慎はともに来季チーム残留を発表した。田口は千葉に悲願のBリーグ制覇をもたらせるか。
「何度コケても僕は立ち上がるだけ」
1万2972人が発した応援の声は、どちらのチームが大きかっただろう? 中立開催のファイナルは、声援がダイレクトにコートに届いていた。
「タイムアウトが明けてコートに出るときに、声援が聞こえました。本当に応援の声がすごかった。ブースターの声で気持ちがのって疲れがとれるし、足が軽くなる。一緒に戦ってくれて、すごい力になりました」
残り5分間も千葉の猛追が続くが勝利には届かず、67-71で千葉は敗れた。会場のスクリーンには、硬い無念の表情を浮かべた田口の表情が、容赦なく大写しになった。
「本当に終わったんだなって。それしか考えられなかった。東京が喜んでいるのを見たくなくて、耳を塞いで千葉側の得点板を見ていました。泣いているブースターが見えて、信じて応援してくれていたのに、その気持ちに応えられなくて、本当に申し訳なかった。
ファイナルのビデオは、試合から5日後に見ました。絶対に見たくないわけではないけれど、4日間は勇樹とゴルフをしたり、チームメイトとボウリングをしてリフレッシュしました。
また次、ですね。何度コケても僕は立ち上がるだけ。だって、コケたままだと終わりだから。どんなときも立ち上がってきたことが今の僕を築き上げているし、人生はそんなに簡単じゃない。むしろ僕は、人生を楽しんでいるほうだと思います」
オーストラリアを経験した比江島。
「セミファイナル2日目のビデオは見ていません。見ても悔しいだけだから。来シーズンのCS前に、あの悔しさを思い出すために見返します」
勝率1位の千葉ジェッツと2位の栃木ブレックスの組み合わせになったセミファイナル1日目、栃木は67-75で敗戦した。後がなくなった2日目、比江島はどんな気持ちでコートに立ったのだろう?
「前日の怪我でライアン・ロシターが試合に出場できないと分かっていたので、今まで以上に僕がアシストや点を取ることを意識してプレーしよう、と思っていました。僕がチームの中心でプレーするという責任感を持っていて、コートに出るときは、100%勝てると信じていました」
比江島は、シーホース三河から栃木に移籍した直後にオーストラリアのブリスベン・ブレッツへ移籍、5カ月後に帰国して栃木でプレーをするという、濃い2018-19シーズンをすごした。
それは、次々に現れる目の前のハードルへ、必死に立ち向かっていく日々だった。