サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
類まれなる才能だからこそ壁も多い。
久保建英に思い出すジーコの言葉。
posted2019/06/11 11:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
「気まずかったですけど」
初のA代表ベンチ入りを果たした久保建英をテレビカメラが追う。ベンチに座っているときも、アップしているときもだ。その様子について久保本人は試合後にこう語った。
2-0とリードした後半、ゴール裏のアップエリアから久保がベンチへ向かっただけで、スタジアムが沸く。その様子がオーロラビジョンに映し出される。試合とは無関係の歓声に、ピッチでプレーしていた昌子源も「出るんだな」と理解したという。
ベンチ入りしなかったトリニダード・トバゴ戦でさえ、スタンドに座る久保の姿が試合中にオーロラビジョンで紹介されていたことを考えればまだまともかもしれないが、違和感があるのも事実だ。
メディアが1人の選手にスポットライトを当て、スターとして祭り上げる様子には過去何度も遭遇してきた。しかし、これほどまでに注目を集めた選手はいなかった。
久保のA代表デビュー戦は記憶に残る。
名門中の名門FCバルセロナの下部組織に所属したときから、久保の日本代表入りを待ち焦がれた人は少なくないだろう。その期待を担い、その期待に応える活躍を経て、晴れてA代表デビューを飾った久保は、ピッチでその才能の片りんをすぐさま見せつけた。
DFを背負いながらも落ち着いた技を披露。裏を狙うときの動き出しのタイミングの良さ、守備時でもボールを前へ運ぼうとするイメージの溢れたプレー……久保がボールを持つたび、久保へパスが出されるたびに歓声が沸き、久保のパスが繋がらないと大きなため息に包まれる。スタンドを埋めた観客の眼をくぎ付けにした。
2019年6月9日キリンチャレンジカップ対エルサルバドル戦は、久保のA代表デビュー戦として人々の記憶に残るだろう。2-0という勝利とともに。
しかし、この勝利に久保が貢献したわけではない。惜しいシュートはあったものの、ゴールを決めたわけでもない。記録上では、出場23分、シュート1本という数字だけが残った。