ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
去るアザール、控えで腐らぬジルー。
チェルシーEL優勝で美しく終わる縁。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byAFLO
posted2019/05/31 10:30
ELのトロフィーを手にして笑顔のジルー。一方でアザール(10番)はこの試合がチェルシーでのラストゲームとなるのが濃厚だ。
EL得点王のジルーは男気の残留。
一方のジルーは、「チームファースト」の姿勢を高く評価するクラブからの契約延長オファーを承諾し、5月に新たな1年契約にサイン。チェルシーに残留する道を選んだ。彼はチェルシーでも山あり谷ありのキャリアが続いている。
ELでは11ゴールを決めて見事得点王に輝いた。彼の存在がなければ、今季のチェルシーは無冠のままシーズンを終えていただろう。ところが、プレミアリーグでは昨季はアルバロ・モラタの、今季はゴンサロ・イグアインのバックアッパーという立場を強いられ、やっぱりエースと認めてもらえていないのだ。
だから、この夏にレギュラーの座を約束するクラブへと移籍する選択肢もあったはずだ。しかし、チェルシーには来季、FIFAから補強禁止処分を科されて選手を獲得できないというクラブ事情がある。
そんな窮地を救うべく、「僕は本物のブルー」と語り、チームに残ることで男気を見せた格好だ。そんな心意気に加え、「カップ戦要員」と言われてもピッチに立てば誰よりチームのために戦う姿勢は、着実にファンの信頼を集めつつある。今季のELは、まさにそういう彼の真骨頂が発揮された場だったと言えるだろう。
ファンに愛される2人の優勝メダル。
誰もが認めるチームの王様でありながら、新しいチャレンジに踏み出そうとしているアザール。控えの立場でも腐らずコツコツと信頼を築き、クラブに残って挑戦を続けることを決めたジルー。
立場や形は違えど、同じようにファンから愛される2人のフットボーラーが一緒に獲得したELの優勝メダルは、去り行くアザールにとってはチェルシーで最後のタイトルとして、残るジルーにとっては自らが牽引して勝ち取ったタイトルとして、それぞれ特別な思い出として心に刻まれることだろう。
進む道の先はそれぞれ違い、これからは“付かず離れず”ではなくなるかもしれないが、きっとそうだ。