ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
去るアザール、控えで腐らぬジルー。
チェルシーEL優勝で美しく終わる縁。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byAFLO
posted2019/05/31 10:30
ELのトロフィーを手にして笑顔のジルー。一方でアザール(10番)はこの試合がチェルシーでのラストゲームとなるのが濃厚だ。
最初はロンドンで違うクラブだったが。
そして2012年、アザールがチェルシーへ、ジルーがアーセナルへと移籍し、2人はイングランド・フットボールの扉を叩いた。アザールは西ロンドンでもすぐさま王様となり、プレミアでも優勝して年間最優秀選手に輝いた。
かたやジルーは、北ロンドンでもゴールを重ね、献身的な姿勢も評価されたが、ここ一番での決定力不足やチームをプレミア優勝に導けなかったこともあり、なかなかエースとして認めてもらえなかった。
そして'17年夏、クラブがアレクサンドル・ラカゼットをこれまたフランスから引き抜くとサブへの格下げに遭い、'18年1月にチェルシーへと新天地を求めた。
そうして、同時期にフランスで花開き、ロンドンでは同じ街の違うクラブでプレーしてきた“付かず離れず”の距離にいた2人は、チームメートになり、コンビネーションを磨き、一緒にトロフィーを掲げる仲になったのだった。
アザールが残していく置き土産。
だが、2人が同僚としてプレーする期間は残念ながらわずか1年半で終わることになりそうだ。
EL決勝後、アザールは英国のテレビ局『BTスポーツ』のインタビューを受け、「フットボールの世界では何が起こるかわからない」としつつも、「これが最後のお別れになると思う。おそらく、今が新しいチャレンジをするタイミングだ」と宣言した。
新しいチャレンジの場は、レアル・マドリーになるだろう。子供の頃から彼が憧れてやまないジネディーヌ・ジダンのラブコールを断れるはずはなく、すでにチェルシーでチャンピオンズリーグ以外のあらゆるタイトルを手にした彼をこれ以上ロンドンに引き止めるのは無理だ。
これまでの貢献や、今季見せたキャリアハイとも言える最高のパフォーマンスと置き土産のトロフィー、それに日常的に発していた本人のチェルシー愛を考えれば、サポーターも快く彼を送り出すのではないだろうか。