プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「マシソンは巨人魂を持っている」
不調リリーフ陣に今、必要な男。
posted2019/05/31 07:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
5月29日。甲子園球場での阪神戦。巨人の勝ちがなくなった延長12回裏だった。あと1イニングだけ踏ん張って、何とか引き分けに持ち込んで欲しい――レフトスタンドの巨人ファンのそんな願いは、あっけなく打ち砕かれてしまった。
この回からマウンドに上がった7番手の桜井俊貴投手が四球と内野安打で1死一、二塁のピンチを招く。急遽、マウンドに上がった池田駿投手も木浪聖也内野手に粘られた末に四球を与え1死満塁、そこから飛び出した代打・高山俊外野手のサヨナラ満塁弾だった。
もちろん2つの四球はいただけない。2ボールから苦し紛れに投げ込んだ池田のカットボールも甘かった。
だが、問題はそこではない。
「池田にはちょっと荷が重かったかな」
4時間30分の激闘の末のサヨナラ負け。原辰徳監督は前日に一軍昇格したばかりのサウスポーを責めることはなかった。
8回に澤村が投じた「軽率」な真っ直ぐ。
この敗戦の本質は、いまの巨人が抱えている問題をはっきりと映し出すものだった。
問題は延長12回にはない。何より責められるべきは、試合終盤まで完全な勝ち試合をきちっと勝ち切ることができなかったことなのである。
ポイントは8回に3番手の澤村拓一が、阪神のジェフリー・マルテ内野手に浴びた同点2ランだった。
「完全な投げミス」
もちろんこう悔やんだ澤村本人だって、打たれようと思って打たれたわけではない。
ただ、2点差で走者を置いて1発狙いの外国人選手に対して、不用意に投じた真っ直ぐは「軽率」の感は拭えない。そうして開幕からずっと続いている中継ぎ、リリーフ陣の崩壊が、この試合でも露呈した。勝ち試合をすんなり逃げきれない。またも巨人の厳しい現状を突きつけられた敗戦だったのだ。
そんな苦しいチーム状況を目の当たりにするたびに、巨人ファンが待望している投手がいるはずである。
「あの投手がいてくれたら」
ファンだけでなく首脳陣もそう待望しているはずの男――スコット・マシソン投手がようやくチームに戻ってくる。