プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「マシソンは巨人魂を持っている」
不調リリーフ陣に今、必要な男。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/05/31 07:00
29日の阪神戦8回裏、マルテ(奥左)に同点2ランを浴びた巨人の沢村。本人も「完全な投げミス」と悔やんだ一球だった。
阪神にも広島にもいる精神的支柱。
もちろんマシソンにとっても、実際に相手打者を抑えることが一番の仕事なのだが、同時に今の巨人のブルペンに必要なのは経験豊富な精神的支柱となり得る存在ではないかとも思う。
例えば阪神が好調な最大の原因はピアース・ジョンソン、ラファエル・ドリス両投手の勝利の方程式だが、そこにつないでいく役割をベテランの藤川球児、能見篤史両投手がしっかりと支えていることは大きい。
広島も一岡竜司投手からカイル・レグナルト、ヘロニモ・フランスア投手とつないで最後に中崎翔太投手が控えている。
試合の終盤には鉄火場となるブルペンには、精神的支柱となり得る、そういうリーダーの存在は欠かせない。
「助っ人というイメージはないね」(原監督)
打たれても抑えても、一番きつい場面を引き受けてくれるベテランがいることで、若いリリーバーのプレッシャーは軽減され、それがピッチングにもいい形で反映されるものなのだ。そういうブルペンの化学変化を起こせる存在として、マシソンはいまの巨人に一番必要な投手なのである。
「彼は外国人選手が与えられるような、いわゆる助っ人というイメージはないね」
キャンプの頃にこう語っていたのは原辰徳監督だ。
「来日してすでに8シーズンが経って、私自身も前回、指揮を執っていた時から知っている。チームへの献身だとか、勝利への執念だとか、ある部分では経験の浅い日本人の選手よりはるかに巨人魂というものを持っている選手だと思う」
マシソンとはそういう投手なのだ。
ここ数年悩まされてきた膝の故障も、昨年のクリーニング手術により痛みの原因が除去された。ただ、長年の酷使がたたり、患部は予想以上にダメージを受けていることも分かった。
「こんど(故障を)やったら野球をできなくなるかもしれない」
手術をしたドクターにはそう宣告されたと聞く。それでもマシソンは来日して再び巨人のユニフォームを着る決意をした。
背水の決意を胸に秘めた右腕が帰ってくる。