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恩師モウリーニョも脱帽の人格者。
EL決勝は男チェフの最後を見逃すな。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byUniphoto Press
posted2019/05/29 11:45
モウリーニョなどからも賞賛されるGKペトル・チェフ。最後の試合は古巣チェルシーとの対戦となった。
モウリーニョも賞賛するペトル・チェフ。
今シーズン限りで引退するベテランGKは常にチームファースト。恨みつらみを口にせず、黙々と努力を重ねてきた。チェルシー在籍時はティボウ・クルトワに、今シーズンはベルント・レノに定位置を奪われたものの、波風を立てるような言動には走らない。
ピッチの暴走が目立つネイマール(パリ・サンジェルマン)、ポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)、マリオ・バロテッリ(マルセイユ)などは、チェフの爪の垢を煎じて飲むべきだ。
かつての師ジョゼ・モウリーニョも絶賛する。
「男として選手として、なにより人間として最高」
また、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、そして母国チェコの言語を流暢に操れるため、数多くの外国人選手がチェフに頼った。キャプテンのローラン・コシェルニーも、「本当のリーダーはチェフなんだよ。彼がいるからチームがまとまるんだ」と、人望の厚さを証言している。
ラストマッチは古巣戦。
アーセナルのウナイ・エメリ監督は、プレミアリーグはレノ、ヨーロッパリーグはチェフという起用法だった。決勝になって翻意するとは思えず、アーセナルの選手たちも「優勝カップをチェフとムヒタリアンのために」と考えているはずだ。モチベーションは申し分ない。
チェフがカップを掲げたとき、古巣チェルシーのサポーターも惜しみない拍手を送るだろう。勝負の世界は厳しく、バッドエンドは何度も観てきた。しかし、両チームのために尽くし、サポーターにもあふれるほどの愛情を注いできたチェフの最後は、悔し涙より笑顔が似合う。
ヨーロッパリーグ優勝とチャンピオンズリーグ出場権を置き土産に名GKがピッチを去る。素敵なフィナーレじゃないか。