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ダービーはやはり「特別」なのだ。
歴史に残る大逆転はなぜ起きたか。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2019/05/27 11:45

ダービーはやはり「特別」なのだ。歴史に残る大逆転はなぜ起きたか。<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

ロジャーバローズに跨った浜中俊は、ダービー制覇を喜ぶというよりも信じられないという表情をしていた。

戸崎に「ぼく、残っていましたか?」。

 単騎で逃げるリオンリオンとの差を3馬身ほどに詰めて直線に入った。直線入口で激しく手綱をしごき、ラスト400m手前でステッキを入れ、ゴーサインを出した。

「後ろを待たずに、差されてもいいからと、早めにスパートしました」

 浜中の叱咤に応え、ラスト400mを切ったところで、ロジャーバローズがリオンリオンをかわして先頭に躍り出た。

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 ラスト300m。戸崎圭太のダノンキングリーが、外から凄まじい脚で迫ってくる。さらに外からサートゥルナーリアが猛然と追い上げてくる。

 それらの追い上げを振り切り、ロジャーバローズが先頭でゴールを駆け抜けた。

 勝ちタイムは2分22秒6。'15年のドゥラメンテの記録をコンマ6秒更新した。

 クビ差の2着がダノンキングリー。そこから2馬身半遅れた3着がヴェロックス、4着がサートゥルナーリアだった。

 浜中はガッツポーズをせず、入線後、ターフビジョンのほうを振り返ったり、ほかの騎手の顔を見たりしていた。自分が勝ったと確信できなかったのだという。

「(自分が)残っているとは思ったのですが、必死でしたし、無になったというか、頭が真っ白になりました。普通のレースなら勝ったと思える差でしたが、まさかという思いもありました。

 ゴールしてから、(2着ダノンキングリーの)戸崎さんに『ぼく、残っていましたか?』と訊いたら、『残ってるよ』と言われました(笑)。ウィニングランのとき、掲示板の1着のところに1番と表示されているのを見て、本当に勝ったんだ、と思いました」

祖父に託されたダービーの夢。

 そう話す浜中は、今年デビュー13年目。6度目の参戦でダービージョッキーになった。

 騎手になったのは祖父の影響だった。祖父はいつも「わしが死ぬまでにダービーを勝ってくれ」と言っていたという。

「祖父は3年前に亡くなりました。ぼくがミッキーアイルでマイルチャンピオンシップを勝った日でした。ぼくにとって、かけがえのない人でした。今日のレースを見せたかったけど、じいちゃんの夢を叶えることができて……それが一番嬉しいです」

 声を詰まらせ、涙を浮かべてそう言った。

 騎乗馬の強みを生かし切った見事な手綱さばきで、天国の祖父に大きな勝利をプレゼントした。

【次ページ】 単勝9310円はなんと史上2番目。

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