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伊調馨、前人未到の五輪V5へ。
敗戦にも「こんなもんじゃない」。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2019/05/07 18:00
アジア選手権の女子フリースタイル57kg級準決勝でヨン・ミョンスクに破れた伊調馨。
「ちょっと幸せボケしていました」
実績のあるアスリートに対して、我々はいつまでも絶頂期のイメージを重ね合わせがちだ。伊調のように五輪4連覇を達成した生きるレジェンドならなおさらそうだろう。そうした見方をされることは承知のうえで、伊調はいまの自分を全て受け入れているように見えた。
「復帰してからはレスリングをやれている幸せを感じていました。これからは幸せより必死に勝ちにいこうかなと思います。ちょっと幸せボケしていました(微笑)」
過去の積み重ねで得た感覚も大切ながら、それだけでは足りないことも自覚している。
「(リオの時と比べても)相手も違えば、階級も違う。同じままだとダメだと思うので、レスリングスタイルも変えていかないといけない。ただ、変えてうまくいかない時もあれば、うまくハマる時もある。その場で瞬時に判断してダメなら次というふうに対応することができれば、勝ちにつながっていく。戻す感覚とともに進化する感覚も大事にしたい」
新世代も台頭する57kg級。
6月の全日本選抜選手権では川井梨紗子との天王山が控える。勝てば世界選手権への出場切符を手にすることができるが、57kg級にはアジア選手権優勝('17年、55kg級)の実績を持つ南條早映(至学館)ら新世代も台頭中。代表争いは激戦が予想される。
ヨン戦の敗北が川井を始め、全日本選抜で闘う対戦相手にヒントを与えてしまったのでは? と聞かれると、伊調は強気な一面をのぞかせた。
「いやぁ、逆にこんなものかと思ってもらった方がうれしい。こんなもんじゃないので。フフフッ」
何か吹っ切れたか。