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伊調馨、前人未到の五輪V5へ。
敗戦にも「こんなもんじゃない」。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byKoji Fuse

posted2019/05/07 18:00

伊調馨、前人未到の五輪V5へ。敗戦にも「こんなもんじゃない」。<Number Web> photograph by Koji Fuse

アジア選手権の女子フリースタイル57kg級準決勝でヨン・ミョンスクに破れた伊調馨。

際立った北朝鮮勢の躍進。

 ヨンだけではない。今大会で北朝鮮勢は目立った活躍を見せた。男子の中では最も金メダル獲得を期待されていたグレコローマン60kg級の文田健一郎(ミキハウス)や、女子53kg級では昨年の世界王者・向田真優(至学館大)も北朝鮮の選手との対戦で涙を呑んだ。女子62kg級では川井友香子(至学館大)も準決勝の北朝鮮戦であわやというところまで追い込まれている。

 ヨンを筆頭に北朝鮮の選手についての共通項はよく対戦相手を研究しているということに尽きる。筆者は思わずアトランタオリンピック女子柔道48kg級で当時無敵の快進撃を続けていた田村亮子を破ったケー・スンヒの存在を思い出してしまった。北朝鮮は忘れた頃にやってくる。

世界レベルでは「紙一重の勝負」。

 決勝は昨年の世界選手権優勝の栄寧寧(中国)とヨンの一騎討ちとなったが、栄が4-2で勝利を収めた。この一戦を伊調はアップ場のモニターで観戦していたという。表彰台は中国、北朝鮮、日本、モンゴル(もうひとりの銅メダリスト)というメンバーだった。伊調はみんなトントンという印象を抱く。

「結局、勝ちたいという気持ちが上回った方が勝つと思いました。技術的な面で差はない。試合運びの面での紙一重の勝負だったと思う。世界選手権に行けば、みんな必ず上位に入ってくる選手だと思う。そこの3名と肩を並べたことはうれしいし、誇りに思う」

 知っての通り、伊調は東京オリンピックで男子も含め史上初となる五輪V5を狙う。にもかかわらず昨年12月の全日本選手権で実現した川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)とのリーグ戦初戦に続いて、復帰後2敗目を喫してしまった。

 かつての伊調だったらありえないと振られると、伊調はどこまでがジョークかわからない口調で話し始めた。

「自分でいうのもなんですけど、これまでがやっぱり強かったんでしょう」

 続けて負けることへの恐怖は感じないかと水を向けられると、伊調はフフフッと一蹴した。

「もう、そういうのはないですね。国内でも海外でも自分が楽に勝てないことはわかっていたことですから」

【次ページ】 「ちょっと幸せボケしていました」

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