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春の天皇賞、本命はフィエールマン。
ルメールは「盾男」たちに並べるか。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYasuo Ito/AFLO
posted2019/04/27 09:00
1月のAJCCでは頭差の2位だったフィエールマン。間隔、距離ともに、優勝した菊花賞を再現するようなリズムで天皇賞に臨む。
保田は引退の2年前、武は29歳で。
その昭和と平成の盾男だけが達成した記録がほかにもある。
八大競走(皐月賞、ダービー、菊花賞、桜花賞、オークス、天皇賞・春、天皇賞・秋、有馬記念)の完全制覇だ。
保田は、68(昭和43)年にマーチスで皐月賞を勝って八大競走完全制覇を達成した。そのとき48歳。引退する2年前のことだった。
武は'98(平成10)年にスペシャルウィークでダービーを制して達成。29歳だった。
「盾男」に挑むルメール。
その大記録に王手をかけ、今週の第159回天皇賞・春(4月28日、京都芝外回り3200m、4歳以上GI)で、達成を狙う騎手がいる。
フィエールマン(牡4歳、父ディープインパクト、美浦・手塚貴久厩舎)で参戦するクリストフ・ルメール(39)だ。
保田が初めて達成してから、武がつづくまで30年。それからさらに21年経った。平成最後のGIは、半世紀で3人目の偉業がなし遂げられる、歴史的レースになるかもしれない。「平成の盾男」の武が香港に遠征しているため参戦しないのは寂しいが、代わりに、武をリスペクトするルメールが、大きな見どころを用意してくれた。
ドバイターフ、桜花賞、皐月賞とGIを3連勝している彼は、JRA通算1000勝という別の大記録も達成しようとしている(前週終了時で997勝)。土曜日のうちに到達しているかもしれないが、天皇賞・春で達成となれば、その日は「ルメールデー」になるだろう。
ルメールが騎乗するフィエールマンは、昨年、福島のラジオNIKKEI賞で2着となって以来3カ月半ぶりの実戦となった菊花賞を制した。絶対的な能力の高さを証明したと同時に、レースとレースの合間を過ごす「外厩」であるノーザンファーム天栄の調整技術の高さを広く知らしめた。
そこからまた3カ月あいた年明け初戦のAJCCは頭差の2着。そしてまた3カ月の間隔を置いてここに来た。
1800mのラジオNIKKEI賞から3000mの菊花賞、そして2200mのAJCCから3200mの天皇賞・春と、距離延長の度合いも同じようなリズムで来ている。
前走は熱発のアクシデントがあったが、今回は万全の状態。スタミナは十分で折り合いにも不安はない。メンバー中唯一のGI馬の意地を見せてくれるだろう。