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初代表・鎌田大地は“くそガキ”だった。
才能に惚れたスカウトが明かす秘話。 

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占部哲也(東京中日スポーツ)

占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe

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photograph byJFA/AFLO

posted2019/03/22 12:00

初代表・鎌田大地は“くそガキ”だった。才能に惚れたスカウトが明かす秘話。<Number Web> photograph by JFA/AFLO

鎌田大地のティーンエージャー時代はやんちゃだったという。牛島がほれ込んだ才能は日本代表でどんな化学反応を生み出すか。

「ほんま、くそガキだったから」

 未知の原石の光を失いたくなかった。鼓動を聞き、胎動を感じた。鎌田を口説く前に、クラブを説得した。熱意、情熱、執念は実る。冬の高校選手権・京都府予選の準々決勝で敗れた後に契約を結んだ。11月17日という遅い加入発表だったが、反比例するように才能は一気に開花し、加速した。

 鎌田は高卒1年目からレギュラーを獲得。空間を自在に操るパスを元日本代表FW豊田陽平、元コロンビア代表FWイバルボらに届け、在籍2年半でドイツへ飛び立った。鳥栖でのラストマッチとなった2017年6月25日の浦和戦後のセレモニーで感謝の言葉を述べた。

「僕は高校の時に拾ってもらって。サガン鳥栖だけが僕に声をかけてくれた。(1年目の森下仁志監督は)くそガキだった僕の面倒を見てくれて、すごくお世話になりました。あの人じゃなかったら、今の僕は確実にない」

 試合後のミックスゾーンでも「ほんまに『くそガキ』だったから」と口にした時の柔和な笑顔が今も忘れられない。鋭く尖っているだけでなく、人間には丸さと柔らかさが必要――。鋭利だった10代。牛島が鞘となり、プロへの道を開いてくれた。

トロイデン加入で固めた覚悟。

 だが、2017-18シーズンのドイツでは辛酸をなめた。1シーズンで公式戦出場はわずか4試合に終わった。そして、昨夏。ベルギー1部シント・トロイデンへの期限付き移籍を決めた。

 鎌田の口癖があるという。

「ここで出られなければオレは終わる」

 ガンバ大阪ユースに昇格できず東山高に進学したが、冬の高校選手権で全国切符を得ることはできなかった。高校では複数のJクラブから興味を持たれたものの、正式オファーを出したのは鳥栖だけ。

 崖に落ちそうになっても、細いロープを渡ってきたサッカー人生。強迫観念に近い危機感が原動力でもあった。

【次ページ】 シュートがなぜか入っちゃう。

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鎌田大地

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