“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
単なる“早熟タレント”じゃない。
17歳松岡大起は鳥栖の起爆剤となる。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/03/20 07:30
ユース所属の2種登録選手ながら、リーグ戦3試合連続でスタメン出場する松岡。U-18日本代表のUAE遠征メンバーにも選出された。
ゴールの匂いを感じさせる質の高さ。
この状況に応じた柔軟な動きが、起点を生み出す。
32分、松岡が敵陣で左サイド深くまで猛プレスを仕掛け、相手のクリアを誘発。こぼれ球を中央に入り込んだ原が拾った瞬間、松岡はペナルティーエリアの右脇にポジションを取った。そこから、金崎夢生のクロスをニアで受けた松岡は鋭く縦に切れ込み、マイナスの折り返しを中央に供給。フェルナンド・トーレスに合わなかったが、チャンスを演出した。
激しい前からのプレスとプレスバック、そしてフリーランニングからのスペースの創出とゴール前への侵入。決して目立つわけではないが、松岡のプレーは攻守において鳥栖の潤滑油となっていた。
しかし、彼は交代を余儀なくされた。鳥栖ペースで進んでいた62分、CB高橋祐治がこの日2枚目のイエローカードで退場となったのだ。1人少なくなった鳥栖ベンチはすぐに動き、DFの選手を投入。これまでリーグ2試合すべてにフル出場をしていただけに、言ってしまえば試合展開の犠牲になった交代と言える。
無念の途中交代、ベンチで祈る。
74分、鳥栖は左サイドでFKを得た。原川力がボールをセットすると、ベンチの左端で座っていた松岡は両手を重ね合わせ、うずくまるようにその手を額に当てた。
「頼む、決めてくれ」
このFKこそ、ゴールに直結しなかったが、その後も祈るようにピッチを見つめる松岡の想いが届いたのか、後半アディショナルタイム2分に劇的なカウンター劇が待っていた。
左ワイドの位置でボールを受けたMF高橋義希が、インナーラップしたボランチの原川にスルーパス。完全にフリーとなった原川のクロスに飛び込んだのは、途中出場のFWクエンカだった。ドンピシャヘッドは見事にコントロールをされて、ゴール右隅に吸い込まれた。
喜びを爆発させる鳥栖の選手、スタッフ。
もちろん、松岡もその輪の中にいた。待ちに待ったリーグ初勝利。祈るような表情を見せていた松岡の顔にも弾けんばかりの笑顔が浮かんでいた。