「まさに超人じゃないですか」

松岡「長年パワーリフティングに取り組んできて、どこに一番この競技の魅力を感じてますか。観る人に何を注目してほしい？」

大堂「それは上がる瞬間ですね。200kgという、到底持ち上げられないような重さのバーベルが、実際に人の手で上がるところ。まさに超人じゃないですか。そういうところを見てほしいです」

松岡「確かに、超人というか、スーパーマン的な感覚は確かにあります。この質問も答えにくいかもしれないですけど、ぜひ答えて下さい。

　秀樹さんが上げているものって何ですか？　

　単純な重さではない、何かもっと大きなものを上げているような気が僕はしたんです」

大堂「何を？（しばし首をひねる）」

松岡「例えば『自分の人生を上げてます』とか、そういう答えを言う方もいると思うんです。でも秀樹さんはそんな風に考えないと思って、でもあえて聞いてみたかった。ケガをしてまでも上げ続けてきたのは何だったのか」

大堂「それはね、終わった人が考えることですよ。現役の選手で今打ち込んでいるなら、それは考えなくても良いことです。何やってきたんだろうって振り返るのは、今の僕には必要ないですね」

松岡「いやあ、そうきたか……（一本取られたという表情で）。大堂さん、それ、サイコーの答えですね。皆さんの思いを上げてますとか、そういう答えが返ってくるとは思ってなかったですけど、その答えも想定外でした。口調も力強かったです。

　ちょっとそちらにいる女性にもお話を伺って良いですか。確か僕、一度お会いしてますよね」

以前会った女子の選手に……偶然再会！

　そう言って、松岡さんが声をかけたのはマクドナルド山本恵理さん。日本財団パラリンピックサポートセンターで仕事をしながら、パラ・パワーリフティング女子55kg級の選手として日本代表入りしており、インタビュー中にトレーニングルームの隅で、日本パラ・パワーリフティング連盟の事務局長・吉田寿子さんの指導を受けながら汗を流していた。松岡さんは以前、パラアスリートのイベントで彼女と会ったことがあるそうだ。

松岡「ちょっと髪の毛の雰囲気が変わっていたので気づかなかったです」

山本「お久しぶりです！　そうです、短くしました。それに太りました（笑）。50kg級から55kg級に階級を上げたんです」

松岡「ここでトレーニングしているときに、秀樹さんに色々とアドバイスをもらうこともあるんですか」

山本「はい。今、練習しながらおふたりの話を聞いていたんですけど、私にも同じことを話してくれます。『俺は2、3年に1人の天才だから』って、確かによく言ってるなって（笑）」

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