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11年前の“史上最高のダービー”で優勝…歴代最速“32秒7の末脚”・エイシンフラッシュはなぜ「その後2年間」勝てなかったのか?
text by
石田敏徳Toshinori Ishida
photograph byKeiji Ishikawa
posted2021/05/28 17:02
2010年の日本ダービーは「史上最高」と呼ばれた
長いトンネルをようやく抜け出したのは'12年秋の天皇賞。道中は中団のインにつけ、エネルギーを溜めて進んだM・デムーロ騎手とエイシンフラッシュのコンビは、直線に向くと内ラチ沿いから閃光のような末脚を繰り出し、ダービー以来の勝利を掴む。この天皇賞は近代競馬150周年を記念し、「天覧競馬」として行われたレース。引き上げてきたデムーロ騎手はスタンド前で馬から下り、両陛下に向かって深々とした一礼を捧げた。
「菊花賞回避」は正しかったのか?
あのとき渋る平井氏('13年3月に死去)を説き伏せて菊花賞の回避を決めた自分の判断が本当に正しかったのかは「今でも分からない」と藤原調教師はいう。菊花賞を回避したから天皇賞を勝てたのか。それも誰にも分からない。
とはいえ、エイシンの勝負服に身を包んだ騎手が両陛下への畏敬をこめて、まるで騎士のように一礼を捧げた美しい場面が、後世までずっと語り継がれていくことは間違いない。
エイシンフラッシュ
2007年3月27日、北海道千歳市生まれ。父キングズベスト、母ムーンレディ。'10年、皐月賞3着後ダービーを制覇。'12年、天皇賞・秋を勝利し騎乗したミルコ・デムーロは天皇皇后両陛下にひざまずいて最敬礼した。通算27戦6勝。