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30年前「トウカイテイオーのダービー」はディープともブライアンとも違っていた 圧勝か、大敗かだった名馬の“特別な強さ”とは

posted2021/05/29 06:00

 
30年前「トウカイテイオーのダービー」はディープともブライアンとも違っていた 圧勝か、大敗かだった名馬の“特別な強さ”とは<Number Web> photograph by Bungeishunju

トウカイテイオーが制した30年前のダービーは、ディープインパクトら三冠馬とは違った衝撃があった

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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「ダービーを圧勝した馬」というと、近年では、2005年のディープインパクト、1994年のナリタブライアンあたりを思い浮かべる人が多いだろう。ディープは飛ぶような末脚で、ブライアンはねじ伏せるような強さで、ともに2着を5馬身突き放した。

 では、「ダービーを楽勝した馬」はどうか。勝った馬も負けた馬も一生懸命走っていたことを承知のうえで言うと、それはやはり、1991年のトウカイテイオーではないか。着差こそ3馬身で、ディープとブライアンに及ばないが、競馬史に残る2頭の三冠馬とは種類の異なる特別な強さを持った馬だった。

皐月賞は単勝2.1倍、強さに懐疑的な見方も

 トウカイテイオーは、史上初の無敗の三冠馬となった「皇帝」シンボリルドルフの初年度産駒である。1988年4月20日、北海道新冠町の長浜牧場で生まれた。母は84年のオークス馬トウカイローマンの半妹のトウカイナチュラルという良血だ。

 当歳時から牧場で「テイオー」と呼ばれていたこの馬は、「トウカイ」の冠で知られる内村正則の所有馬として、栗東・松元省一厩舎に入厩した。

 安田隆行を背に、90年12月1日、中京芝1800mで行われた新馬戦を4馬身差で勝つと、次走、12月23日、京都芝2000mのシクラメンステークスも2馬身差で優勝。

 年明け初戦、91年1月19日の若駒ステークスを2馬身半差、3月17日の皐月賞トライアル、若葉ステークスを2馬身差で勝って4連勝。すべてが完勝であった。

 5戦目は、4月14日、クラシック三冠の皮切りとなる皐月賞。大外18番枠から流れに乗って直線で抜け出し、2着に1馬身の差をつけて優勝。単勝2.1倍の1番人気に応え、初のGIタイトルを手中にした。

 あとで振り返ると、単勝2.1倍というのはつきすぎのように思われるが、重賞に出走した経験がなく、しかも少頭数のレースにばかり使われていたので、4戦4勝の戦績を額面どおりには受け止めず、懐疑的な見方をする向きもあったのだ。

【次ページ】 ダービーは大外「20番枠」で1.6倍の圧倒的1番人気

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