セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテルの風紀を乱す毒婦ワンダ。
夫イカルディは主将を剥奪され……。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/02/20 11:15
人気グラビア・アイドルだったワンダ・ナラ(右)。イカルディと結婚する前は元アルゼンチン代表マキシ・ロペスの妻だった。
ペリシッチにしてみれば……。
インテルに限らず、ロッカールームは選手という個人事業主たちが寄り集まった集団だ。
それぞれが家族を背負い強烈な自負とプライドを持って、チームの勝利という共通の目的のために、契約上自らのエゴをある程度抑えこんで労働を提供している。
特に今季のインテルは無頼の個性派が集まった。1つにまとまるには主将という拠り所あってこそ、のはずが、その妻が背中から打つような真似をすれば恨まれるのは当然だ。
昨秋、イカルディは前シーズンの得点王獲得を感謝するためにチームメイト全員にロレックスを贈ったが、そんなものは信頼関係とは呼ばない。
赤の他人から契約問題に口出しされたペリシッチにしてみれば、“たかだか50万円程度の腕時計1つで大将ヅラするな。おまえんところの出しゃばり女房を黙らせろ”と楯突きたくもなるだろう。
監督からの主将解任通告。
主将イカルディへの信頼は崩壊した。
ロッカールームの不穏な空気を察知したマロッタCEOとスパレッティ監督は協議し、13日の午前練習後、イカルディを呼び出し、混乱の責任を問う形で主将解任を通告した。
「難しい決断だった。イカルディを取り巻いているものはクラブやチームにとってよろしくないものでね……それを一度きちんとしようということだ。クラブのために下した判断だった」
スパレッティはEL遠征先のウィーンで、慎重に言葉を選びながら、解任がフロントとともに下した決定だということを強調した。
スパレッティは、前職のローマ時代に主将トッティの処遇を巡って、やはり著名なTVタレントであるトッティの妻イラリーから口撃を受けたことがある。
しかし、賢明なイラリーはスパレッティの仕事やチームメイトたち、ましてや契約問題に口を挟むことは決してしなかった。彼女は、夫と同僚たち、クラブが不可分に結びついていることを理解していて、職分のテリトリーを侵さない程度にはスパレッティへ敬意を払っていたから、大した問題にはならずに済んだ。
しかし、代理人という肩書を持つワンダは自分が何を言ってもいい、と勘違いしているらしい。そして、イカルディに彼女を諌めることなんて期待できない、ということを知らないインテリスタはいない。